近年、職場や学校生活の中で、『ハラスメント』という言葉を頻繁に聞くようになった。自分の利益や尊厳を守る規律である一方、トラブルとなった際の対応に追われるケースも少なくない。

「今は国を挙げてハラスメントの対策をしています。厚生労働省によれば、『パワー・ハラスメント』の基準は“優越的な関係を背景としたこと” “業務上必要かつ相当な範囲を超えた言動” “労働者の就業環境が害される”と3つの概要を満たすものと明確に定義しています」(全国紙社会部記者)

 これらの定義をもとに、一般社団法人日本ハラスメント協会では『職場でよくあるハラスメント種類』として45種の事例を認定している。

「例えば、お菓子を職場で特定の人だけに配らない『オカハラ』(お菓子ハラスメント)や接待や飲み会などのカラオケで歌いたくない人に無理やり歌うことを強要する行為『カラハラ』(カラオケハラスメント)などがあります。社会事情を鑑みるに今後もハラスメントの種類は増加していくのではないでしょうか」(前同)  

 そもそも『ハラスメント』という言葉は一体いつ生まれたのだろうか。『セクシャル・ハラスメント』という言葉が新語・流行語大賞で金賞に選ばれたのは1989年のこと。その発端を働き方評論家の常見陽平氏が語る。 

「初めて『セクハラ』が認知されるようになったのは、86年に起きた『西船橋駅ホーム転落死事件』。酔ってプラットホーム上で痴漢行為をした男性を女性が線路へ突き飛ばしたところ、そこに突っ込んできた電車に轢かれた事件でしたが、裁判を通して“男性が女性を低い立場として認識している”ことが社会の中で問題視されるきっかけにもなりました。

 なお現在では、職場などでの男女間の非合理的な格差や仕事を任されないことを『セクハラ』と呼び、意味合いは大きく変化しました」  

 また、2000年初頭から広まった企業の『コンプライアンス研修』もハラスメントをビジネスマンに周知させている。 

「企業の情報管理などと併せ、同僚や部下への接し方についての研修を全社員が受けるようになりました。大企業では20年の6月から、中小企業では22年の4月から『ハラスメント相談窓口』の設置も義務付けられています。国民のハラスメントに対する意識が向上したのではないでしょうか」(前同)