■リモートワークの普及で急造の『リモハラ』とは

 他者へ不利益や不快感をもたらすハラスメント。最近はその種類も社会の変化に合わせて多様化しているようだ。例えば、コロナ期に流行した『リモートワーク』。この新しい働き方にまつわるハラスメントも存在する。前出の働き方評論家の常見氏が語る 

「通称『リモハラ』と呼ばれ、在宅勤務中のオンライン会議中などに上司が部下へと向かって“部屋の中を見せてよ”と発言することなどが該当します。必要以上にプライベートに干渉しているとして、相手に不快感を与えているというわけです」  

 人材不足に悩む介護現場や医療現場では『ペイハラ』に悩む従業員も少なくない。 

「医療従事者に対する患者(ペイシェント)からのハラスメントです。医療の複雑化が原因で患者家族が過ぎた要望を口にすることも珍しくありません。これらの行き過ぎた要望を『ペイハラ』と称します」(前同・以下「」は常見氏)

 なお、ハラスメントは、職場に限らず家族間で発生することも往々にしてある。 

「例えば、自分が不機嫌であることを口調や態度に露骨に表すことで相手を威圧する『フキハラ』が周囲に不快感を与えるとして問題視されています」 

 そして職場で管理職らが最も対応に悩むケースが多いものの一つが、『スメハラ』(スメル・ハラスメント)だ。

「本人の食生活、身体的特徴も関わってくるので、他人から言い出しにくい問題です。一方、香水や柔軟剤の香りで体調を崩す人もいるので看過はできません。『ハラスメント』と深刻化する前に、普段から気になった時点で指摘・指導できるような関係構築を築くことを管理職側は目指していくべきでしょう」 

 相手が“不快”と感じればハラスメントと扱われることも珍しくない昨今の世の中。企業の管理職クラスの社員の中には「部下への業務や指導が思うようにできない」と考える人も多いというが……。 

「実際に上司からのちょっとした注意を“ハラスメントでは?”と指摘する若手社員による『ハラハラ』(ハラスメント・ハラスメント)も社会には存在します。しかし、職場内の誰かが“不快”と感じれば、それは業務を妨げる要因となり得る。実際に社内で特定の誰かが不利益を被っていないかを第三者の立場から仲裁や審議をする存在が必要ですし、定期的な社内研修や事前の指導が大切になります。

 また、世代間や育った環境でマナーや当たり前は異なるということを理解する。そんな管理職側のマネジメントスキルの向上も求められるでしょう」  

 “悪気はなかった”では済まされない時代。社会生活において、思いやりやマナーの持ち方をもう一度確認しておきたいところだ。

働き方評論家 常見陽平(つねみ・ようへい)
リクルート、バンダイ、コンサルティング会社、フリーランス活動を経て千葉商科大学学基盤教育機構 准教授に。いしかわUIターン応援団長、社会格闘家としても活動中。