■タイアップまみれで「テレビ化」してしまったYouTube
また、YouTube離れの要因の一つが、プラットフォームの“テレビ化”です。企業とのタイアップや大物YouTuberによる安定したコンテンツが主流となり、無名クリエイターがバズを生み出す余地が狭まっている現状があります。これは、初期のYouTubeが持っていた「自由で開かれた空間」というイメージとは明らかに異なります。
実際にネット上では、《おじさんおばさんが参入してきたら、若者は別のところへ行くよね》《20年くらい前はニコニコ動画が盛況で、それが一昔前には『やっぱYouTubeだわ』になって、今はこれだから時代を感じる》《これまでも世代ごとに流行る場所が違っていただけだから、特別な現象ではない気がする》といった声が散見されます。
「でもYouTubeショートがあるじゃないか」といった反論もあるかもしれません。実際、TikTokより利用率が高いというデータも存在しています。
2023年12月に行われたヴァリューズ社の調査によれば、YouTubeショートの利用率は約63%とTikTokの約41%を上回っていたそうです。ただ、それでもTikTokのような「新しい何かが始まりそうな空気感」を演出するには至っていない印象があります。
「TikTokの最大の強みは、たとえ無名でも“面白ければ一気に拡散される可能性がある”という希望があることです。YouTubeは、ある程度フォロワーがいないと動画が伸びにくい構造になっていますし、企画や編集に手間がかかるため、気軽に始めにくい面があります。Z世代は“瞬間のひらめき”を重視する傾向があるので、TikTokとの相性が良いのは自然な流れだと思います。ただ、YouTubeにもライブ配信やスーパーチャットなど、コミュニケーション重視の機能が整いつつあるので、今後それをどう生かすかが鍵になるでしょう」(YouTubeに詳しいIT系ライター)
もちろん、YouTubeが「オワコン」になったわけではありません。ショートやライブ配信、メンバーシップなど、収益化モデルが多様に整っている点は、TikTokにはない強みです。じっくりとコンテンツを育てていくスタイルや、ファンとの長期的な関係性を築く文化は、YouTube独自の魅力といえるでしょう。アルゴリズムとユーザー体験の工夫次第で、動画プラットフォームの覇権は今後も大きく変わっていくのではないでしょうか。
トレンド現象ウォッチャー・戸田蒼
大手出版社でエンタメ誌やWEBメディアの編集長を経てフリー。雑誌&WEBライター、トレンド現象ウォッチャーとして活動中。