日々、若者文化やトレンド事象を研究するトレンド現象ウォッチャーの戸田蒼氏が、本サイトで現代の時流を徹底解説。いま戸田氏が注目するのは、倒産が急増している美容室の“生き残り戦略”だ!
全国に約27万件ある美容室が今、過去に例を見ない苦境に直面しています。民間の調査会社である帝国データバンクによれば、2024年度(2024年4月〜2025年3月)に発生した美容室の倒産は2月時点で197件。前年よりも8%増加し、過去最多を更新しています。この数字は、美容業界全体が抜本的な変革を迫られていることの証左といえるのではないでしょうか。
経営悪化の背景には、「人手不足」「原材料費の上昇」「競争激化」という三重苦があります。円安の影響も重なり、カラー剤やシャンプーなどの美容資材は過去5年間で14〜16%も価格が上昇。一方で、全国の平均カット料金は3700円前後と、この5年でわずか4%しか値上がりしていないという現実があります。コストだけが上がり、価格に転嫁できない状況が続いているのです。
実際に2024年度の決算が明らかになっている店舗のうち、約3割が赤字を記録。前年度からの減益を含めると、約6割が業績悪化という厳しい数字に直面しています。これは20年度のコロナ禍での急激な落ち込み(赤字率73.5%)に次ぐ深刻な水準であり、もはや一時的な経済変動ではすまされない構造的課題に。そんななか、美容室の現場では生き残りをかけた多様な戦略が始まっています。