■「放送法に違反しているのか?」元キー局プロデューサーの見解

 SNS、ネットが大荒れとなっている7月12日の『報道特集』の内容――元テレビ朝日プロデューサーで報道、情報番組を手掛けてきた鎮目博道氏は、こう分析する。

「まず、『報道特集』は、独自での取材がしっかり行なわれている硬派な報道番組である点は評価されています。

 しかし、番組の姿勢が公正ではなく、いわゆるリベラルに偏っているのではないか、とは前から言われていて、賛否ある番組ではありました。

 今回の放送の場合、参政党だけを取り上げて批判していた、という意味では、非難が起きても不思議ではないと思います」(鎮目氏、以下同)

 一方で、鎮目氏は「放送法に違反しているのか?」という質問には「そこまでとは言えないと思う」と言い、こう続ける。

「少し前にBPOが選挙報道について見解を出しているんです。選挙報道は公正中立にやらなければいけない、という規定があるのは確かですが、その解釈の仕方として“1つの番組の、1回の放送を見て判断するべきではない”と言っているんです。それは、“選挙期間中の、1つの放送局全体で考えて、バランスがとれているか”で判断するべきだと見解を出しているんですよね」

 政党の数が増えていることもあり、1回の放送で、すべての政党について取り扱うのは不可能に近い。そのため、何回かに分けて各政党を放送しないと、尺が足らなくなってしまう、という事情も鎮目氏は指摘する。

「そのため、今回の場合、7月12日放送の『報道特集』だけを取り上げて“放送法違反か?”と聞かれると、そうとまでは言えないのかな、と僕は思います。

 もちろん、あの放送内容では参政党だけを非難しているような感じなので、支持者から批判されるのは不思議ではない。参政党の主張の良いところなども総合的に取り上げないと、番組に対して厳しい声が出るのは仕方ないところはありますね。

 前に述べたように『報道特集』は、若干、政治的に中立とは言えない気もするので……たとえば、次回の『報道特集』は選挙の前日に放送されますが、そこでの内容でバランスをとるとか、そういうことが必要かもしれないな、とは個人的に思います。

 また、TBSでは『報道特集』だけでなく多くのニュース番組が放送されていますから、その内容も含めて、全体的にバランスが取れていれば、放送法違反ということにはならないと思われます」

 大揺れとなっているTBSの『報道特集』。参院選直前の7月19日には、どんな内容が放送されるのか――。

鎮目博道
テレビプロデューサー。92年テレビ朝日入社。社会部記者、スーパーJチャンネル、報道ステーションなどのディレクターを経てプロデューサーに。ABEMAのサービス立ち上げに参画。「AbemaPrime」初代プロデューサー。2019年独立。テレビ・動画制作、メディア評論など多方面で活動。著書に『アクセス、登録が劇的に増える!「動画制作」プロの仕掛け52』(日本実業出版社)『腐ったテレビに誰がした? 「中の人」による検証と考察』(光文社)