■『ちはやふる』は青春ドラマの傑作確定
指摘にあるように、ドラマ版は劣等感を抱いている生徒たちがメインになる。それは、顧問が主人公属性の千早(広瀬すず)ではなく、控えめな性格の奏(上白石萌音)であることからもはっきりわかる。世界観を引き継ぎながらも前作の続きではないこともあって、新たな視聴者も入りやすい。さらに、“千早と奏”の関係を“凪とめぐる”に置き換えられているため、前作ファンの心もしっかり掴んでいる。シリーズものの新作として、満点の設定と言えるだろう。
また、新世代のキャストも素晴らしい。當真あみの屈折を抱えながらも一瞬、見せる輝き、そして原菜乃華のすべてを圧倒するキラキラ感は、一気に視聴者を引き付ける魅力に溢れていた。そんな2人に対し、上白石萌音が大人の安定感を見せつつも、自身の夢をかなえられなかった後悔からの心のゆらぎを見せる絶妙な演技。この3人だけで勝利を確定させる初回だった。
さらに、脇を固める若手陣も、初回から登場している映画『カラオケ行こ!』で注目を集めた齋藤潤(18)。第2話から登場する、映画『マイスモールランド』で多くの賞を受賞した嵐莉菜(21)、子役出身でNHK朝ドラ『半分、青い。』で佐藤健(36)の子供時代を演じた高村佳偉人(17)など、期待させる顔ぶれ揃いだ。
そんなポテンシャル十分な若手俳優たちによって、それぞれ葛藤を抱える高校生たちの青春が描かれていく……。それだけで胸が熱くなる。
初回の平均世帯視聴率は5.2%(ビデオリサーチ調べ/関東地区)と、まずまずといった数字だが、まだ魅力的なキャラが出揃っていないので、本番はこれからだ。競技かるた部のメンバーが登場し、物語が動き始めれば、その輝きは何十倍にもなるはず。前作は青春映画の傑作と言われているが、本作が新たな傑作になりそうだ。(ドラマライター・ヤマカワ)
■ドラマライター・ヤマカワ 編プロ勤務を経てフリーライターに。これまでウェブや娯楽誌に記事を多数、執筆しながら、NHKの朝ドラ『ちゅらさん』にハマり、ウェブで感想を書き始める。好きな俳優は中村ゆり、多部未華子、佐藤二朗、綾野剛。今までで一番、好きなドラマは朝ドラの『あまちゃん』。ドラマに関してはエンタメからシリアスなものまで幅広く愛している。その愛ゆえの苦言もしばしば。