■松本潤と小芝風花のバディに期待

 主人公の徳重(松本潤)は、ゴッドハンドでも超天才医師でもない。また、物語はサスペンス要素はないし、医療もの定番の院内の権力争いもない。徳重が“問診”重視の穏やかなタイプということもあり、ドラマとしてはかなり地味だ。松本の演技は円熟味が出ていて良かったものの、派手な勧善懲悪ものがウケる日曜劇場としては物足りない印象があり、高い視聴率のスタートではないのも仕方ないだろう。

 松本が“受けタイプ”の前に出ないキャラを演じるぶん、注目したいのは新米医師・滝野役の小芝風花だ。次回予告で、整形外科の滝野(小芝)が「やめとけ、総合診療なんて」と言われ、総合診療科を目指すことがほのめかされており、滝野が物語を動かす役割のようだ。徳重が“静”なら、滝野が“動”。ある意味で裏主役であり、バランスのいいバディになることに期待したい。

 そうなると、徳重の“問診”による診察を描きながら、滝野の成長も物語の軸のひとつになっていくはず。小芝は、ドラマ全体の誠実な雰囲気にも、滝野の真摯なキャラにも、うまくハマりそうで、松本に寄り添いながら物語を引っ張っていってくれるだろう。

 ドラマ自体は、“人を診る”というテーマが丁寧に描かれており、作品のトーンが似ているのは、最近だと昨年10月期の『放課後カルテ』(日本テレビ系)だ。『放課後カルテ』は徐々に評判が良くなっていったので、『19番目のカルテ』もじわじわと評価を高めていくタイプかもしれない。今後の視聴率アップに期待だ。(ドラマライター・ヤマカワ)

■ドラマライター・ヤマカワ 編プロ勤務を経てフリーライターに。これまでウェブや娯楽誌に記事を多数、執筆しながら、NHKの朝ドラ『ちゅらさん』にハマり、ウェブで感想を書き始める。好きな俳優は中村ゆり、多部未華子、佐藤二朗、綾野剛。今までで一番、好きなドラマは朝ドラの『あまちゃん』。ドラマに関してはエンタメからシリアスなものまで幅広く愛している。その愛ゆえの苦言もしばしば。