■クセ強ドラマを引っ張る稲垣吾郎

 学校で起きるいろんな問題に、学校が嫌いなスクールロイヤーが挑み、生徒とともに成長していく王道の学園ドラマと思いきや、かなりテイストが違っていた。登場人物が画面越しに語りかけてくる演出、健治(磯村)が生徒や学校への違和感をやたら強調するところなど、けっこうクセの強い作品のようだ。

 X上では《視聴率度外視のNHKでしか作れないようなドラマを民放でやってみたい、脚本の大森美香さんの静かな野心みたいなものを感じた》という声もあるが、まさにその通りだろう。単純に問題解決や成長といったわかりやすい物語ではなく、今後も可視化されにくい問題を提起することに徹していきそうだ。野心作ではあるが、なじめない人も少なくないだろう。

 ただ、キャストは盤石だ。磯村勇斗のドラマの世界観へのなじみ具合。堀田真由の的確すぎるフォローと受け。稲垣吾郎も、学校に校則の改正を求める模擬裁判のディベートシーンでは、丁寧な言葉で理論整然と校則の必要性を語る、目の覚めるようなキレキレの演技を見せてくれた。

 初回の平均世帯視聴率は4.6%(ビデオリサーチ調べ/関東地区)と、好調発進といえる数字ではなかったが、今後の盛り上がりの鍵を握るのは、尾崎理事長役の稲垣だろう。堀田演じる幸田は健治のフォロー役なので、健治と対立する役回りになるのは、過去に因縁がありそうな尾崎だろう。クセの強いドラマだが、稲垣の演技が吸引力になり、視聴者を引き付けるだろう。

 稲垣は公式サイトで尾崎について、「健治には、とある理由から素っ気無く冷たい態度をとるのですが、それはなぜなのか徐々に明らかになっていきます」と語っているように、その人物像が見えてくるのは、まだ先のようだ。約9年ぶりの民放連ドラ出演となる稲垣が、どんな演技を見せてくれるのか、これから楽しみだ。(ドラマライター・ヤマカワ)

■ドラマライター・ヤマカワ 編プロ勤務を経てフリーライターに。これまでウェブや娯楽誌に記事を多数、執筆しながら、NHKの朝ドラ『ちゅらさん』にハマり、ウェブで感想を書き始める。好きな俳優は中村ゆり、多部未華子、佐藤二朗、綾野剛。今までで一番、好きなドラマは朝ドラの『あまちゃん』。ドラマに関してはエンタメからシリアスなものまで幅広く愛している。その愛ゆえの苦言もしばしば。