■TikTok Japanの「見解」と「対処」は

 まず盗撮映像のアップロードについて、TikTokでは「問題ない」という見解なのか――。TikTok Japanの広報担当者に話を聞いた。

 Xで相次いでいる「問題なし」の回答を出していることに関しては、「ご指摘の投稿につきましては、具体的な報告内容や対象となったコンテンツが記載されていないため、コメントできかねます」としつつ、

「TikTokは他者の知的財産権を尊重しています。利用規約およびコミュニティガイドラインの遵守を徹底し、他者の著作権、商標権を含む知的財産権を侵害するコンテンツの利用を認めておりません」(広報担当)

 と、問題視するスタンスを明確にする。そのうえで、対処については、

「当社は、他者の著作権、商標権、その他知的財産権を侵害するコンテンツに対し、厳正な対応を行っております。これには、当該コンテンツの削除、LIVE機能の一時的な利用制限、権利侵害を繰り返すユーザーのアカウント停止等の措置を含みます」(前同)

 と説明。ただ、今回の『鬼滅の刃』の問題に対して特別な措置に出るなど、具体的な対策についての返答はなかった。

 なお、TikTokで著作権侵害と思われるコンテンツを発見した場合、「著作権侵害報告」を提出することで、同サービスのオンラインフォームまたはアプリ内で、侵害コンテンツの削除を要求することができるとも広報担当は回答。

「TikTokに限らず、著作権侵害報告を提出するには、権利を侵害されている作品の所有者または正式な代理人である必要があります。報告には、所有者または正式な代理人であることを示す証明となる書類の添付が必要です。コンテンツがTikTokの知的財産権ポリシーに違反していることが確認された場合、TikTokからそのコンテンツが削除されます。どのような措置が取られたかについて、報告者と報告対象者の両方に通知が送られます」(同)

 つまり、第三者がせっせと通報してもなかなか改善されないということになるが……。前出のITライターが、蔓延する違法動画の実態を解説する。

「あらゆる動画投稿サービスにおいて、当然、著作権の侵害は認められていません。ただ実際には違法動画が多く投稿され、それらすべてを取り締まるのは難しいのも現実でしょう。

 たとえば、YouTubeでは著作権を持つ側が通報するほかは、自動検出によるパトロールにより削除されています。ただ、自動検出だと誤って削除してしまうこともあり、その場合は手動で運営に連絡する必要がある。結局、確実なのは著作権をもつ側による通報です。

 ですが、1つ1つの違法転載について対処をしていくには人的コストもかかります。『鬼滅の刃』の公式Xが“刑事告訴を含む厳正な対処”をしていくというので、今後、しかるべき対処がなされることを待つしかありません」

 盗撮動画の転載については、YouTubeよりTikTokのほうがより多くの投稿数が確認できるが、映画の盗撮映像をアップロードすることによる“メリット”は、やはり「収益」だ。

「YouTube同様、TikTokも動画視聴数に応じて報酬を受け取れる仕組みが導入されています。『鬼滅の刃』は外国人にも確実に人気を集めるコンテンツで、かつ彼らの間では投稿や閲覧が気軽なTikTokが人気。プラットフォーム側の対策が求められるのはもちろん、もしかすると劇場側もさらなる対策を求められていくようになるのかもしれません」(前同)

『鬼滅の刃』の世界的大ヒットが浮き彫りにした、国境を超えた“映画泥棒”問題。早期解決を願うばかりだが──。