■牛乳が熱中症対策に最適な理由
牛乳が熱中症対策に最適な理由は、それだけではない。
「熱中症になりやすい人は血液の循環が悪いことが多いです。血液の循環が悪いと体の温度調整がうまくいきません。血液の循環を良くするためには良質のタンパク質が不可欠なんです」(前出のサイエンスライター川口氏)
タンパク質が弱った肝臓を修復し、血流や筋肉量を増やしてくれるのだそう。その良質なタンパク質を多く含んでいるのが牛乳というわけだ。
「さらに牛乳にはトリプトファンというアミノ酸成分があって、これは体内でセロトニンという脳内物質に変わります。セロトニンは“幸せホルモン”と呼ばれ、リラックス状態になって良質の眠りを助けますので、熱中症にもつながる夏場の不眠や肉体疲労の予防にもぴったりですね」(前同)
だが、牛乳を飲むとおなかを壊しがちという人もいるだろう。いわゆる乳糖不耐症の体質だ。
「そうした方には、飲むヨーグルトがおすすめです。発酵の過程で乳糖が分解されているため、おなかにやさしい形で摂取できます」(同)
一方、牛乳はちょっと苦手という人や、夏場はもっとさっぱりとしたものが飲みたいという人も多いはず。そんな人に向けて川口氏は、工夫次第で牛乳を体内に取り入れやすくなるはずだと提案する。
「フルーツと合わせてスムージーにしたり、冷製スープにしたりするのもおすすめです。じゃがいもやトウモロコシを使ったポタージュ風の冷製スープなら、食欲が落ちた時期にも飲みやすいでしょう」
川口氏は、大切なのは“継続”だと言う。
「牛乳は一度に大量摂取しても劇的な変化はありませんが、毎日少しずつ飲み続けることで熱中症対策につながる栄養補給や疲労回復の効果がありますので、生活習慣に組み込んでおくといいでしょう」
この夏、水分補給の常識を見直してみては?
川口 友万(かわぐち・ともかず)
1966年生まれ。サイエンスライター。富山大学理学部物理学科卒業。『科学の常識』と『社会が持っている知識』との乖離の大きさにいち早く気づき、『科学の常識』を広く知ってもらうためにフリーライターとして独立する。健康情報やサプリメントにも造詣が深い。子ども向けの小説「先生、オカルトは科学で解けますか?」(幻冬舎)などの書籍多数。