■元テレ朝Pの見解「“番組側が言わせた”というのはちょっと考えにくい」

 炎上沙汰になってしまった“井澤アナ発言”の深層は――元テレビ朝日プロデューサーで報道、情報番組を手掛けてきた鎮目博道氏は、ニュース番組制作のリアルな現場経験を踏まえて、こう話す。

「普通に考えると、ニュース番組で、アナウンサーにこういう形で締めのコメントを言わせることはありません。それはコメンテーターの仕事です。そのため、“番組側が言わせた”というのは、ちょっと考えにくいですね。台本に“自由に感想を言っていい”程度のことは書くかもしれませんが、具体的には指示を出さないと思います。

 ですから今回は、アナウンサーが、自分で考えたうえでの感想を言ったのではないでしょうか」(鎮目氏、以下同)

 鎮目氏はそう言うが、“締めの一言”が評価されているアナウンサーも実際にいる。最たる例は、元日本テレビアナウンサーの藤井貴彦(53)。彼は、特に2010年度から24年度までMCを務めていた『news every.』(日テレ系)で、締めの一言が話題になることも多かったが――、

「アナウンサーがコメントする際には、常識的に考えて誰も思うような、世間的に意見が分かれていないことを言うことが多いんです。意見が分かれる話題は、コメンテーターに言わせるものです。アナウンサーがコメンテーターに感想を聞くことはあっても、番組がアナウンサーに感想を言わせることは少ないですね」

 たしかに、藤井が『news every.』で言及していたのは、日本中が祝福した新垣結衣(37)と星野源(44)の“逃げ恥婚”や、コロナ禍、震災での注意喚起など、世間で見解が一致している話題が多かった。

「今回で言えば、“誹謗中傷はいけない”という部分だけなら、自由に言っても問題はなかったと思いますし、そう考えたからこその発言だったのでしょう。

 しかし、広陵高校の事案は、“SNSでの告発は良いことなのか”とか、“高校に非があるのではないか”とか、多くの意見があり、そのうえで事実確認がまだハッキリしていない状況にありましたよね。それなのに、一方的にも捉えられるような見解だけを言ったから、問題になっているんでしょう」

 さらに鎮目氏は、「発言が一方的だからこそ、今回の発言はアナウンサーの独断の可能性が高い」と語る。

「仮に番組が意見を言わせるしたら、複数の目線での意見を言っていたはずです。しかし、今回のアナウンサーは、一方の意見しか言っていない。そのため、独断ではないか、と考えられるんです」

 今回、井澤アナの発言に対して、視聴者からは《藤井アナの数々の呼びかけに影響されたのか知らんけど今回の件の加害者被害者を履き違えんなよ》《藤井貴彦アナに憧れんたんかなぁ》といった声も上がっている。

 井澤アナがどういう思いで「SNSの何気ない投稿が~」と発したのかは彼以外には分からないだろうが、ニュースを伝える“アナウンサーの言葉”はやはり重いもののようだ。

鎮目博道
テレビプロデューサー。92年テレビ朝日入社。社会部記者、スーパーJチャンネル、報道ステーションなどのディレクターを経てプロデューサーに。ABEMAのサービス立ち上げに参画。「AbemaPrime」初代プロデューサー。2019年独立。テレビ・動画制作、メディア評論など多方面で活動。著書に『アクセス、登録が劇的に増える!「動画制作」プロの仕掛け52』(日本実業出版社)『腐ったテレビに誰がした? 「中の人」による検証と考察』(光文社)