■見やすさに徹している『スティンガース』

 今回のストーリーには、《誘拐メインのドラマはよっぽど意外性のある展開がなければ、見飽きた感が出ちゃうよな》などと、意外性が足りないことを指摘する声もあった。しかし、そもそも本作はおとり捜査によって事件を解決していくプロセスよりも、スティンガースチームがワイワイやっているのを楽しむもの。

 暑さで疲れの溜まりやすい夏は、気軽に見られるドラマが作られることが多いのだが、今期、こういうポップなドラマは『スティンガース』のみ。そういうところも、視聴者の評価が高い理由だろう。

 また、チームのメンバーのキャラが渋滞していないのもいい。最近は各キャラに恋人や家族のエピソードを加え、深みを持たせようとするが、本作はメンバーの背景を見せず、スティンガースだけで完結させている。そのため、あれこれ考えずに楽しめる。のんきな作品に見えるが、実はけっこう考えて作っているようだ。もちろんそれらを実現する演者の技量の高さがあってこそなのは、言うまでもない。

 次回は、行方不明事件を解決するため、スティンガースが謎の宗教団体に潜入するのだが、なぜがメンバーが中世西洋の貴族コスプレをしていて、ポップな捜査が見られそう。9月に入っても、まだ暑さは続きそうだが、気軽に見られる『スティンガース』の好調も続きそうだ。(ドラマライター・ヤマカワ)

■ドラマライター・ヤマカワ 編プロ勤務を経てフリーライターに。これまでウェブや娯楽誌に記事を多数、執筆しながら、NHKの朝ドラ『ちゅらさん』にハマり、ウェブで感想を書き始める。好きな俳優は中村ゆり、多部未華子、佐藤二朗、綾野剛。今までで一番、好きなドラマは朝ドラの『あまちゃん』。ドラマに関してはエンタメからシリアスなものまで幅広く愛している。その愛ゆえの苦言もしばしば。