■「外出を控える」のは危険サイン

 本来、お金は人間関係の中で潤滑油となるものですが、それを“減るもの”として拒絶するようになると、他者との交流も避けるようになり、社会的孤立へとつながっていきます。

 人と会えば出費が発生する。だから会わない。それが当たり前になってしまうのです。

「このような状態は、自分が罪を犯したと思い込む『罪業妄想』、自分が重い病気にかかっている『心気妄想』と共にうつ病の三大妄想として精神科でも認知されています。

 症状が出るタイミングや重さは人によって異なりますが、高収入中高年の中でも『常に大きなストレスを抱えているタイプ』『住宅ローンを抱えたばかりの人』『経済的に苦しい家庭環境で育った人』といった人が貧困妄想になりやすい傾向にある、と指摘されているようです」(医療ジャーナリスト)

 SNS上でも、中年世代を中心に、「買い物のレシートを見返すたびに、何か無駄遣いをしてしまったようで苦しくなる」「どれだけ貯金があっても安心できず、将来への不安で眠れない」「お金を使うたびに罪悪感に襲われて、外出すら控えている」といった声が聞かれます。

「お金がない」という不安は、誰にでもあるもの。

 しかし、その不安が現実の生活を脅かすほど強くなった時、それは心のSOSかもしれません。症状に気づいたら、我慢せず、できるだけ早く専門医に相談するなどして、ケアを始めることが大切です。

戸田蒼(とだ・あおい)
トレンド現象ウォッチャー。大手出版社でエンタメ誌やWEBメディアの編集長を経てフリー。雑誌&WEBライター、トレンド現象ウォッチャーとして活動中。