■イメージ向上とは裏腹に、厳しい現実も
こうした環境改善と情報発信により、漁業界では「オシャレで快適な漁師ライフ」というイメージアップを強く推進。漁師は単なる肉体労働者ではなく、海の男としての誇りや自由を味わいながら成長できる魅力的な職業として若者に映っているんです。
しかし、漁業関係者からはこのような声も。
「メディアで取り上げられる華やかな側面だけではなく、遠洋漁業は依然として過酷な仕事であることを忘れてはなりません。長期間の海上生活は孤立感や人間関係のストレスが大きく、新人の離職率は非常に高い。SNSや動画はごく一部の好条件の船や、仕事に慣れた人の様子を映しているに過ぎません」
まだまだ改善されていない部分があるのが本当のところのようです。
「過酷な肉体労働やパワハラ問題も根強く存在し、若者の定着にはさらなる環境改善と精神的ケアが必要。給与面では、若手でも比較的高収入を得られる可能性があり、20代で1000万円超えの例も報告されていますが、これは経験豊富な船長や幹部の引退に伴う特例的なケースであり、安定的なものとは言えません」(前同)
今後、70代のベテラン船員の引退が相次ぐと見られる中で、若手の定着や働き方改革、労働環境のさらなる改善が、持続可能なマグロ漁業界を生み出すうえで不可欠。リアルな情報発信と環境整備を両輪に、漁業の未来を支える若者育成が急務となっています。
過酷な仕事というイメージの変化は見られるものの、現実との乖離がどのように影響するかが、今後のキーポイントになりそうです。
戸田蒼(とだ・あおい)
トレンド現象ウォッチャー。大手出版社でエンタメ誌やWEBメディアの編集長を経てフリー。雑誌&WEBライター、トレンド現象ウォッチャーとして活動中。