■小芝風花らの同期エピがもっとあれば……

 日曜劇場は通常なら全10話だ。おそらく、9月13日に開幕する『東京2025 世界陸上』をTBSが生中継する都合で、本作は全8話になったと思われる。徳重(松本)と赤池(田中)の関係や滝野(小芝)の成長に加え、康二郎(新田)と外科部長の父・陸郎(池田成志/62)の対立など、回収されていない伏線が多く、中途半端さが否めない。

 しかし、その物足りなさは放送回数が少ないためだけではないだろう。本作は、徳重の患者への問診という、対話が物語のベースになっていて、悪人が出てこない穏やかな空気が流れる作品というのはわかる。ただ、新米医師である滝野の成長というもう一つの軸をもっと描いていたら、今以上に盛り上がったのではないだろうか。

 今回の滝野と同期とのつながりのエピソードも、内科医・鹿山(清水尋也/26)に比べると、心臓血管外科医・戸田(羽谷勝太/29)は、それほど描かれていなかった。毎回の治療とは別に、もっと同期3人のエピソードが入るなど、“静の徳重”に対する“動の滝野”で展開すれば、ここまでの食い足りなさはなかったのかもしれない。

 そんな状況に追い打ちをかけるように、9月3日、鹿山役の清水尋也が麻薬取締法違反の疑いで警視庁に逮捕されてしまった。TBSは出演シーンをカットする方向で対応を進めていて、ドラマ自体がぎくしゃくしたものになる可能性が高い。内容以外のところで、またも足を引っ張られそうだ。

 最終回の平均世帯視聴率も7%台だと、第7話の段階で10.1%の全話平均が、1ケタに落ちてしまう可能性がある。勧善懲悪がウケる日曜劇場には、本作は地味な内容で、それも低視聴率の原因だったかもしれない。しかし、それでもあと2回の放送があれば、より深くドラマ世界を描けたのではと思うと、つくづくもったいない。(ドラマライター・ヤマカワ)

■ドラマライター・ヤマカワ 編プロ勤務を経てフリーライターに。これまでウェブや娯楽誌に記事を多数、執筆しながら、NHKの朝ドラ『ちゅらさん』にハマり、ウェブで感想を書き始める。好きな俳優は中村ゆり、多部未華子、佐藤二朗、綾野剛。今までで一番、好きなドラマは朝ドラの『あまちゃん』。ドラマに関してはエンタメからシリアスなものまで幅広く愛している。その愛ゆえの苦言もしばしば。