■NHKドラマ「違約金」「損害賠償」扱いは

 タレントの不祥事が発覚し、降板や再撮影などに至った場合、タレント側に対する違約金が発生するのではとささやかれることも多い。実際にはどうなのか。元テレビ朝日プロデューサーの鎮目博道氏に話を聞いた。

「出演者がテレビ局に提出する“誓約書”は、基本的に“選手宣誓”に近いイメージです。『約束したんだから、変なことはしないでくださいね』といったレベルのもので、出演者が違反したからといって、テレビ局から違約金や損害賠償を求めたりするような話にはあまりならない。広告に出演していた場合は、スポンサーから不祥事を起こしたタレントへ違約金が求められることもありますが、テレビ局とタレントの間では、基本的にシビアな賠償にはなりにくいです」

 とはいえ、代役を立てるなら、その代役のキャスティングにあらためてスタッフが奔走する必要が出てくるし、出演料を含めて余計な手間とお金が発生する。再撮影をするということになれば、他の出演者へのギャランティーはもちろん、追加の制作費も必要となる。そういった追加の費用は、すべてテレビ局側がかぶることになるのだろうか。

「出演者側の不祥事でテレビ局が迷惑を被る場合がある一方で、テレビ局側も、局の事情で番組が急に打ち切りになって出演者側が迷惑を受けることもあるという考え方なんです。テレビ業界は、そういった“貸し借り”で成り立ってきた部分も大きく、だからこそお互いに責任を追及しすぎるのはやめようという関係性で仕事をしていることが多いということです」(鎮目氏=以下同)

 そしてテレビ局にとっては、代役や再撮影の費用よりも、すでに放送が終了している作品の扱いのほうが重要だという。

「最近の地上波ドラマは、ネットでの配信による収益を前提として作られるものも多く、配信ができなくなることは、より大きなダメージになります。放送が終了している作品は、出演者に不祥事があっても再撮影が難しく、最悪お蔵入りになってしまう。そういう意味では、代役を立てることで済んだ『ばけばけ』については、傷が浅かったと言えるでしょう。NHKは“まだよかった”と、胸を撫で下ろしているレベルだと思いますね。

 一方で『海に眠るダイヤモンド』などは配信や再放送が難しくなる可能性もあるわけで、そこはTBSとしても頭が痛いところだと思います」

 たしかに、出演者の不祥事が理由で封印されてしまったままの作品も少なくない。“配信されるかどうか”“再放送されるかどうか”の境目はどこにあるのだろうか。

「基本的にはケースバイケースです。その作品を公開することで、どれくらい世間から批判されるのかということを考慮して、テレビ局の上層部がジャッジして決める。当然、出演者の不祥事がどういうものだったのかも判断材料になるでしょう。とはいえ、最近では“作品に罪はない”という考え方も強くなってきていて、流れは変わりつつある。出演者の不祥事があっても、ネット配信に影響がないケースも増えています」

 いずれにせよ、テレビ局にとっては大ダメージに違いない。