■『もしがく』ならではの魅力とは
『ふてほど』はコンプライアンスで縛られた現代への問題提起。そして、タイムスリップミステリーの要素もふんだんで、幅広い層から支持された。『続・続・最後から二番目の恋』もシニアの生き方だけでなく、さまざまな人たちのリスタートを描いた。だからこそのヒット作であり、懐かしいだけで視聴者の支持を得たわけでない。
では『もしがく』の魅力はなんだろう? それは、主要人物を演じる4人の俳優がカギになりそうだ。『ふてほど』は阿部サダヲ(55)、『続・続・最後から二番目の恋』』は小泉今日子(59)と、50代を主人公にして同世代の視聴者が共感しやすくした。一方、『もしがく』の菅田、二階堂、神木、浜辺は誰も当時を知らない。ここが大きなポイントだ。
WEBメディアのインタビューで菅田は、当時のことを知らないので、いろいろ勉強して臨んだと語っている。おじさんやおばさんにとって、ただ懐かしいだけの物語ではなく、菅田たちが調べて勉強し、翻案して演じることで、新たな1984年になるのではないだろうか。それによって、50代だけでなく、若い世代にも刺さるドラマになるだろう。
20代、30代の若い俳優陣と、菅田が「死んでもいいもん作るぞ!」という情熱が爆発していると称賛する制作陣が作る、新しい1984年の物語は、きっと広い世代の視聴者に支持されるはずだ。物語はストリップ小屋のネオンが光る、渋谷の怪しいアーケード街「八分坂」から始まる……。(ドラマライター・ヤマカワ)
■ドラマライター・ヤマカワ 編プロ勤務を経てフリーライターに。これまでウェブや娯楽誌に記事を多数、執筆しながら、NHKの朝ドラ『ちゅらさん』にハマり、ウェブで感想を書き始める。好きな俳優は中村ゆり、多部未華子、佐藤二朗、綾野剛。今までで一番、好きなドラマは朝ドラの『あまちゃん』。ドラマに関してはエンタメからシリアスなものまで幅広く愛している。その愛ゆえの苦言もしばしば。