南極への旅行が、ひそかなブームとなっている。1990年代は年間数千人程度だった観光客が、2023~2024年のシーズンは約12万人にまで急増。一部からはオーバーツーリズムによる環境破壊を懸念する声も挙がっているほどだ。南極旅行をアテンドする株式会社クルーズライフのセールスディレクター・岩浅隆亮氏が“人気の秘密”を解説してくれた。
「アーネスト・シャクルトンに代表されるように、南極には長い探検の歴史があります。自然環境も豊かなことからネイチャー志向があるアメリカやヨーロッパの人たちから、近年は注目されるようになったんですね。大自然の中で、ペンギンやアザラシといった野生動物を見られるのは大きな魅力。未開の地を目指すということ自体にロマンを感じる方が多いようです」
かつては探検隊など一部の限られた人しか南極はたどり着けない秘境だったが、現在は旅先としてカジュアル化が進んでいるとのこと。暖かいリゾート地を回るようなクルーズ船やラグジュアリーな豪華客船も南極へ向かうようになった。
「南極に行くにはクルーズ船を使うことになります。ただ、その前に世界最南端の街であるアルゼンチンのウシュアイアまで行く必要がある。ウシュアイアから、クルーズ船に乗り換えるんですよ。ここが南極旅行の玄関口になります。弊社のツアーで使うクルーズ船は探検クルーズと呼ばれるタイプで、船にはゴムボートもあります。南極に着いたらこのゴムボートに乗ってホエールウォッチングをしたり、上陸してアザラシの目の前まで接近できます。南極クルーズも様々で、ドレスアップしてフレンチを楽しむような豪華客船の南極クルーズを提供している会社もありますね。お客様がどのようなサービスを求めるかによって、選ぶクルーズ船のタイプも変わってくるでしょう」(前同)
南極はどこの国にも属さないため、入国審査などは当然ない。ただし、上陸に際しては南極地域の環境の保護に関する法律(南極環境保護法)第5条第3項に基づいて“届出書”を環境省に出さなくてはいけない。こちらは申請書1枚で簡単に発行できるという。国境がない以上、ビザや予防接種の準備も不要。では、気になるお値段のほうは……?
「弊社の場合、最安の3人部屋で180万~200万円くらい。それとアルゼンチン・ウシュアイアまでの渡航費がエコノミークラスで40万円くらい。シーズンなどにもよりますが、1人あたり250万円程度は必要になるかと思います。南極はホテルも病院もレストランもありませんので、すべてクルーズ船で済ませることになります。ただ、こちらはオールインクルーシブなのでプラス料金はかかりません」(同)