■置き配トラブルへの解決策とは?
こうした不安を解消しようと、宅配現場では新しい技術や仕組みが導入され始めています。例えば、荷物に添付されたバーコードを専用センサーにかざすことでオートロックを一時的に解錠し、配達員がマンション内に入れるシステム。配達完了後には無効化されるため悪用の心配も抑えられます。また、冷蔵・冷凍対応の宅配ボックスも登場し、マイナス18度から12度まで温度管理が可能で、生鮮食品や冷凍便にも対応できるようになりました。再配達の原因となる生鮮品を受け取れる環境が整えば、ドライバーの負担軽減にもつながるでしょう。
加えて、マンション管理人が一括して荷物を受け取る実証実験も進行中で、管理人を介した安心感や業者側の効率化に期待が寄せられています。
しかし技術が進歩しても、盗難・誤配送・汚損といった根本的なリスクは完全にはなくなりません。濡れた商品はどう補償されるのか、誤って別の家に置かれた場合は誰が責任を取るのか、ガイドラインが整備されていない現状では利用者の不安は拭えないのではないでしょうか。
実際、専門家は「盗難や誤配、破損時の補償内容は会社ごとに異なる。共通のガイドラインを早急に整える必要がある」と指摘しています。宅配ボックスがない物件では置き配を断る人も多く、むしろ賃貸住宅に宅配ボックス設置を義務化するほうが先では、という声も聞かれます。
ネット上の反応を見ても、「個人情報とかそのままで置き配は嫌がる人いそう」「雨降って商品が濡れても保証してくれるわけ?」「盗まれるの怖いしネット通販使うのやめますってなりそう」「治安がますます悪くなってるから心配だね」といった声が聞かれ、便利さとリスクが拮抗するなか、現状はまだ不安視している人が多いようです。
「置き配が標準化されれば、受け取りの自由度が増し、働く人や子育て世帯には大きなメリットがあります。しかし、盗難や誤配送、破損などのトラブル時にどこまで補償されるのかが不透明なままでは利用者の不安は解消されません」(生活情報サイト編集者)
標準化と同時に、補償ルールや保険制度の整備、宅配ボックスやワンタイムパスの普及など、環境整備が並行して進められることが不可欠。
「置き配の普及は宅配業者にとっても顧客にとっても“便利”だけでは済まない制度改革ですから、国や事業者が利用者目線で丁寧に設計していくことが求められるでしょう」(前同)
人手不足という社会課題を解消しつつ、利用者の安心感も守る仕組みへ――。置き配の標準化は配送方法の変更というだけでなく、暮らし方や住まい選びにも影響する大きな転換点となりそうです。
戸田蒼(とだ・あおい)
トレンド現象ウォッチャー。大手出版社でエンタメ誌やWEBメディアの編集長を経てフリー。雑誌&WEBライター、トレンド現象ウォッチャーとして活動中。