日々、若者文化やトレンド事象を研究するトレンド現象ウォッチャーの戸田蒼氏が本サイトで現代のトレンドを徹底解説。多くの人が一度は経験する「置き配」。しかし便利なだけではないようで……。
ネット通販を利用する人が急増し、配達ドライバーの人手不足が深刻化するなか、国土交通省が宅配の基本ルールを見直そうと動き出しました。焦点は「置き配」の標準化です。これまで任意だった玄関前などへの置き配を、標準サービスとして位置づけ、対面での手渡しは追加料金を設定できる仕組みを検討するといいます。
背景には、再配達の負担が年々重くなっている現状があります。宅配便の年間取扱個数は2009年の約31億個から2023年には50億個を超え、東京都内では平日昼間に10件配達しても3件は不在というケースがあるそう。再配達を繰り返すうちに、ドライバーの肉体的・精神的疲労は限界に近づく。だからこそ、国として標準化の議論を始めたのでしょう。
置き配の広がりは数字にも表れています。2019年には利用経験が3割に満たなかったのに対し、2024年には7割以上が「一度は利用したことがある」と回答。便利さが支持される一方、トラブルも比例して増え、2019年には104件だったものが469件にまで増加しています。雨で濡れる、盗まれる、誤配送される、重い荷物で玄関が開かなくなるなど、生活者にとっても無視できない課題が浮き彫りです。高価な品物や一点物の配送については「対面で受け取りたい」という声も根強く、責任の所在があいまいな現状では不安を覚える人も少なくありません。