■配慮なんて言葉は存在しなかった昭和の学校生活

 また、昭和の学校生活では、男女が同室でプールや体育の着替えをしていたことも珍しくありませんでした。小学校では教室や更衣室で、男子も女子も同じ空間で着替えるのが普通だったのです。今では想像もできない光景ですが、当時は施設の不足や教師の管理の都合から仕方ないとされていたのではないでしょうか。 

 もちろん、恥ずかしさを感じた女子や、目のやり場に困る男子もいたはずですが、社会的な配慮はまだ十分とは言えませんでした。さらに学校の健康診断も男女混合で、上半身裸で並ぶ光景が日常だったことも驚きです。

 特に胸囲測定を含む検査では、発育の良い子ほど恥ずかしさを感じたのではないでしょうか。1994年にこの測定は廃止されましたが、昭和の学校ではこうした常識が存在していたのです。

 さらに、自販機で成人向け雑誌を購入できる「自販機本」の存在も、昭和特有の文化でした。1970年代中頃から1980年代中頃まで、全国に2万台以上の自販機が設置され、店員と対面せず購入できる手軽さから未成年でもアクセスしやすく、月間発行部数は最大450万部に達するほどの人気を誇ったのです。内容はヌードグラビアと記事が中心で、記事には体験談やサブカル情報が掲載されることもあり、現代では想像しがたい販売スタイルが成立していました。

 そのほか、職場や飲食店、ドライブインにはヌードポスターやカレンダーが普通に貼られ、漫画においても少年誌や一般漫画に当然のようにえっちなシーンが挿入されることがあり、描きたいものを描く自由が許された時代だったのです。

 結局のところ、昭和の常識は、現代の目で見るとほぼ非常識と言えるものばかりです。

 現代の若者はスマホやネットの時代に生きるため、当時の感覚を想像することは難しいかもしれませんが、昭和のえっち文化を知ることで、時代の変遷と常識の相対性を改めて感じられるのではないでしょうか。

 あの時代があったからこそ、今の私たちの常識も形作られたのだと考えると、懐かしくもあり、ちょっとおかしい記憶の数々に笑ってしまうでしょう。

戸田蒼(とだ・あおい)
トレンド現象ウォッチャー。大手出版社でエンタメ誌やWEBメディアの編集長を経てフリー。雑誌&WEBライター、トレンド現象ウォッチャーとして活動中。