■「”特定の被害者がいない=成立しない”わけではない」――弁護士が解説する“公然わいせつ疑い”の具体的な見解
草なぎはSMAPの一員として人気絶頂の2009年4月23日未明、泥酔して都内の公園で全裸で騒いでいたところを通報され、公然わいせつで現行犯逮捕。当時34歳だった。その後不起訴処分となり、活動自粛期間は4月23日から5月28日までだった。
世間からは同情の声も多く、草なぎはレギュラー番組からも、当時契約していたすべてのCMからも降ろされることはなかった。国を挙げての事業である地デジ普及促進のメインキャラクターとしての仕事も、出演料を辞退することで継続起用となった。
過去、草なぎにもあった「公然わいせつ」による現行犯逮捕。よく聞く罪名だが、具体的にはどのような犯罪なのか。また、どこまで露出すれば公然わいせつとなるのか。本サイトは弁護士法人ユア・エース代表の正木絢生弁護士に話を聞いた。
――「公然わいせつ」はどういう犯罪でしょうか。どこまで露出すれば公然わいせつになるのでしょうか。
「ポイントは“公然性”と”わいせつ性”の2つです。刑法174条は、不特定または多数の人が認識し得る状況(=公然)で、性欲を徒(いたず)らに刺激し、一般人の性的羞恥心を害する行為をしたこと(=わいせつ)を処罰します。
典型例は性器の露出や、路上・公園等での露骨な性的行為です。実際に多人数が見たかではなく、“見え得る状況”だったかで足ります。ビルのエントランス付近や路上での下半身露出は、通常この罪の対象になります。なお、性器以外の部分(臀部や太腿、乳房など)の露出にとどまる場合は、事情次第で軽犯罪法1条20号で扱われることがあります」(正木弁護士、以下同)
――刑罰はどのようなものになるのでしょうか。
「初犯・短時間・被害申告なし・深い反省・再発防止策の提示・社会的制裁の発生——こうした要素がそろうと、略式の罰金処分で終結することが実務上は多い類型です。正式裁判で拘禁刑の言渡しとなるケースでも、3年以下の拘禁刑であれば執行猶予が付く余地があります(刑法25条)。
もっとも、酩酊は違法性を軽くしません。悪質性(時間帯、場所の人通り、反復性、周囲への影響など)の評価次第では、正式起訴や執行猶予付きの拘禁刑判決の可能性も理論上は残ります」
――今回の草間リチャード敬太さんのケースは、直接的な被害者などいないと考えられます。その場合は、罪は軽くなるのでしょうか? 2009年に起きた草なぎ剛さんのケースも同様で、被害者などはいませんでした。
「公然わいせつ罪は、“個別の被害者保護”ではなく公共の性的風俗・秩序を守る犯罪です。ですから“特定の被害者がいない=成立しない”わけではありません。成立は公然性+わいせつ性で判断されます。
他方で、目撃者が限定的、直接の被害申告がない、反省・謝罪・再発防止策、社会的制裁といった事情は、処分・量刑を軽くする方向に働きやすいのも事実です。2009年の草なぎ剛さんの事案では、逮捕後に処分保留釈放、最終的に東京区検察庁が不起訴(起訴猶予)としています。今回も同じ結論になると断定はできませんが、量刑判断で考慮され得る事情の方向性は共通しています」
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公然性とわいせつ性で「公然わいせつ罪」は成立したとしても、《目撃者が限定的、直接の被害申告がない、反省・謝罪・再発防止策、社会的制裁》といった事情があれば、《処分・量刑を軽くする方向に働きやすいのも事実》とのことだ。
《量刑判断で考慮され得る事情の方向性は共通》しているとされる草なぎの活動自粛期間は約1か月だったが、草間は、果たして――。
●プロフィール
正木絢生(まさき・けんしょう)弁護士
弁護士法人ユア・エース代表。第二東京弁護士会所属。消費者トラブルや交通事故・相続・労働問題・詐欺・薬物など民事事件から刑事事件まで幅広く手掛ける。
BAYFM『ゆっきーのCan Can do it!』にレギュラー出演するほか、ニュース・情報番組などメディア出演も多数。YouTubeの「マサッキー弁護士チャンネル」にて、法律やお金のことをわかりやすく解説、ユア・エース公式チャンネル「ちょっと気になる法律相談」では知っておきたい法律知識を配信中。
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