■対策には「パスキー認証の導入」も有効
被害の背景には、「多少の手間は仕方ない」と認証作業に慣れてしまったユーザー心理があるとされます。面倒だと感じつつ繰り返す習慣を利用者が持ってしまい、その油断を突かれる構造です。「自分は詳しいから大丈夫」という過信が逆に被害を招くことも……。
ネット上でも《国民の財産が危ないなら政府が介入して止めてよ》《怖いです。本当にこういうのなくなれと思います》《いいかげん、個人が防衛できる範囲をこえつつあります。もっと実践的な規制が必要だと感じます》といった声が寄せられており、制度的対応を求める意見も増えています。
対策としては、知人からのリンクでもすぐ押さずに別手段で確認する、といった基本の徹底が求められます。
「ネット詐欺は年々手口が巧妙化し、見た目で正規サービスとの違いを判別するのは難しくなっています。かつては怪しいサイトやメールを避ければよかったのですが、現在は普段使うサービスや知人のアカウントが偽装され、利用者の注意力だけでは限界があります」(生活情報サイト編集者)
認証やパスワード管理の仕組みを提供側が強化するとともに、ユーザー教育の機会を増やすことが急務といえます。
「例えば大学の授業や公共講座で、最新の詐欺事例を実際に体験し学べるようにするのも一案でしょう。利用者が自衛の方法を学ぶと同時に、社会全体で被害を抑える枠組みを築く必要があります」(前同)
インターネットは便利さの裏で常に脅威と隣り合わせ。次に狙われるのは自分かもしれません。
戸田蒼(とだ・あおい)
トレンド現象ウォッチャー。大手出版社でエンタメ誌やWEBメディアの編集長を経てフリー。雑誌&WEBライター、トレンド現象ウォッチャーとして活動中。