■今や「配信作品に出演」は箔が付く時代

 前出の三杉氏は「それだけの実績と演技力があるからこそ、所属事務所も沢尻さんの復帰に期待していたのでしょう」と言い、こう続ける。

「俳優業を再開する際、第1弾に選んだのが映画ではなく、キャリア初となる舞台演劇という点からも事務所サイドの思いを感じました。というのも、舞台は映画やドラマに比べて、収益を上げづらいところがありますからね。

 そして、その舞台で真面目に再起を図ろうとしている姿勢を感じさせました。また、舞台は映像作品と比べて長丁場の稽古など、共演者やスタッフとの積極的なコミュニケーションも求められます。それを乗り越えたという部分でも、更生の道を進んでいる印象を与えました。今回の映画もそうですが、話題性で勝負している感もないですよね」

 騒動前の沢尻はたびたび、“現場での態度が悪い”などと報じられていたが、復帰舞台の稽古では若手のタレントよりも早く稽古場入りしたり、共演者に積極的に意見を出したりと、座長をしっかり務めたと言われている。

 そして、次は映画公開が控えている沢尻。俳優として着実に再起の道を歩んでいるようにも見えるが、今後はどのような展開が考えられるだろうか。

「視聴者が不祥事タレントに厳しい目を向ける時代ですから、地上波テレビへの出演は難しいですよね。沢尻さんは今後、俳優としてピエール瀧さん(58)のように映画や配信メディアを中心に活動していくことになるのではないでしょうか。もっとも、それがマイナスに働くことはないと思います。瀧さんは時間はかかりましたが、地上波復帰も叶えましたね」

 瀧は2019年3月、コカインを使用したとして麻薬取締法違反容疑で逮捕され、同年6月に懲役1年6か月、執行猶予3年の有罪判決で確定。

 騒動後、瀧は地上波作品からは姿を消したが、映画や配信ドラマで大成功。Netflix配信ドラマ『地面師たち』(27年7月配信)で演じた役のセリフ「もうええでしょう」は『新語・流行語大賞』にも選ばれた。

 さらに今年に入ってからは、地上波番組にも復帰の動きも見せている。7月21日放送の『キッズが見てる!もしもタレントじゃなかったら』(TOKYO MX)にVTR出演で登場。9月28日放送には、バラエティ番組『メシドラ~兼近&真之介のグルメドライブ~』(日本テレビ系/日曜昼12時45分~)にゲスト出演。地上波キー局出演も叶えた。キー局復帰まで、薬物逮捕から約6年半かかったことになる。

「『地面師』のセリフ“もうええでしょう”が大きな話題になったのが良い例ですが、今や配信作品での活躍は、下手な地上波ドラマよりもずっと話題性がありますよね。現在の芸能界では、大型配信ドラマへの出演は役者として箔が付くんです。

 実際、Netflixなどでは地上波よりも予算や時間をかけて良い作品が撮れる環境にありますし、映画『ちひろさん』(23年2月配信)やドラマ『さよならのつづき』(24年11月配信)で主演を務めた有村架純さん(32)など、地上波のゴールデン帯で主演を張れる俳優が出ることも珍しくありません。

 ですから、沢尻さんが地上波に出られないとしても、それで俳優としての格が下がるわけではない。今後、彼女は、映画や配信メディアを中心に活躍していくのではないでしょうか」

 時代の変化もあり、活躍の場が増えた芸能界。大活躍を見せる瀧と同様に、沢尻も俳優としての勝算はありそうだ――。

三杉武(みすぎ・たけし) 芸能評論家
早稲田大学を卒業後、スポーツ紙の記者を経てフリーに転身。豊富な人脈をいかし、芸能評論家として活動している。多くのニュースメディアで芸能を中心にしたニュース解説を行ない、また「AKB48選抜総選挙」では“論客”とて約7年間にわたり総選挙を解説してきた。