■被災者を勇気づけた1年間だった
そんな2大戦隊が共演した映画『ゴーカイジャー ゴセイジャー スーパー戦隊199ヒーロー大決戦』(2011年6月公開)は、東日本大震災の影響で、同作の宇都宮孝明プロデューサーが“撮影をしている場合ではないのでは”と悩んだが、スタッフ・キャストが「今だからこそやるべき」と声を上げ完成に至った作品として知られる。
同映画でアラタ(千葉)は、先に1年間戦った戦士として確かな貫禄を見せ、活躍。劇中では主にゴーカイレッド(小澤亮太/37)と交流して、彼を戦士として認めるまでの過程が丁寧に描かれた。熱血ではなく、飄々とした食えない感じもあり、それが底知れない実力者らしさにも繋がっていた。
ジョー(山田)は映画だけでなく、当時放送されていたテレビ本編でも準主人公として、かなり見せ場が多く、目立っていた。レッドとの友情や、尊敬していた先輩が敵に洗脳されてしまい泣く泣く介錯する中盤の山場など、多くの名シーンを残している。山田がバラエティ番組などで見せる素の性格はいわゆる“天然”で明るいものだろうが、役ではクールだったり陰がある役を演じることが多いのは、ゴーカイジャーの影響もあるのかもしれない。
さらに同映画には、ゴーカイジャーとゴセイジャーだけでなく、歴代の全35戦隊が一部オリジナルキャストで登場。クライマックスには、ゴーカイジャーたちが絶望的な状況に陥るも、かつて戦隊に励まされた民衆たちが「最後まで希望を捨てずにいよう!」と思い立ち、彼らの応援によって「地球の歴史で一番の奇跡」が――という展開があった。
また、『ゴーカイジャー』放送当時、『忍者戦隊カクレンジャー』(94年度)でレッド役だった小川輝晃(57)が被災地のためにヒーロー経験者が何かできないかと考えて立ち上げたXアカウントを皮切りに、歴代の特撮俳優による励ましのメッセージが被災地に向けて数多く寄せられることに。
上記のムーブメントは、すでに芸能活動を引退していた俳優も含め多くの“レジェンド”が『ゴーカイジャー』へ出演することにもつながり、『ゴーカイジャー』は当時の全35戦隊から最低1人は客演する豪華な作品になり、被災地を元気づける、唯一無二の作品となったのだ。
そんな作品だけに、出演者たちの思い入れも深い。山田は多忙を極める現在も『戦隊』関連の作品に積極的に参加してくれているし、23年6月には若者向けバラエティ番組『沼にハマってきいてみた』(Eテレ)で、こうコメントしている。
「仕事をする上でヒーローがどういう役割でいられるのか、すごく身に沁みて感じた年。お手紙で“ゴーカイジャーが助けに来てくれると信じています”といただいた。でも、実際には助けに行けない。だから、テレビの中でカッコいい姿を見せることが僕らの仕事と深く心に刻んで1年間過ごしました」
そして千葉も『ゴセイジャー』を大切にしている。山田とは違い、客演は叶っていないが、今年7月8日に「スーパー戦隊50周年 応援コメント」では、現在もゴセイジャー俳優たちと交流があることを明かし、次のようにコメントしている。
「今でもお芝居だったりとか、現場の見方だったりとか。そういうのの礎になっている作品。(略)今でも記憶に残っていただいていることを、すごく嬉しく思います」
なお、千葉の出身地は東日本大震災の被災地である宮城県。震災当時は東映で戦隊関係の撮影をしていたこと、被害を受けた故郷に大きなショックを受けたことも、後年に語っている。
そんなエピソードもある『ゴーカイジャー』と『ゴセイジャー』および映画『199ヒーロー大決戦』。今回の『スーパー戦隊シリーズ』終了報道を受けて、
《あの時は小学生の頃で東日本大震災があり、どうなるか不安だったんだけど、仮面ライダーやウルトラマン、何よりもスーパー戦隊がいて勇気づけられた特にゴーカイジャーに数多くのレジェンド達が出演してくれたのは本当嬉しかった》
《NHKの総選挙でも1位だったゴーカイジャー。震災またぎの放送だった。レッドが最終回で、第1回で侵略者に破壊された店でカレーを食べながら「この星の奴らは本当にしぶといぜ」的なセリフを言ったときに泣いた》
《まじで寂しいよねゴセイジャーが1番好きだった》
《ゴーカイジャーは沢山のレジェンドが出て 大人も子供も楽しめて、 何よりも震災の暗さからも救ってくれてました 私はもう大人だったのですが、 小さかった甥姪に作品を見せて明るさを取り戻せました 戦隊は子どもの心を救ってくれましたね》
《中学ん頃に199ヒーロー大決戦を映画館で見て「もしスーパー戦隊に最終回があるならこれが良いなぁ」とぼんやり思ったんですが、そんな時が来るとは思ってもいなく》
といった、前述の作品に言及する声が多く寄せられている。
今回挙げた作品に限らず、どの作品も多くの人々を勇気づけ、場合によっては視聴者の人生にも影響を与えてきた『スーパー戦隊』シリーズ。願わくば、別の形でもいいので続いてほしいものだが……。
特撮ライター・トシ
幼少期に『仮面ライダーアギト』を観て複雑なシナリオに「何かとんでもないモノがスタートした!」と衝撃を受ける。その後、歳を重ねても熱量は衰えず『クウガ』から始まる平成仮面ライダーシリーズと現在も歴史が続く令和ライダーはすべて履修し、『スーパー戦隊シリーズ』、平成以降の『ウルトラ』シリーズも制覇済み。『仮面ライダーゴースト』の主人公の決め台詞でもある「俺は俺を信じる!」を座右の銘に仕事に全力全開。