我々の日々の生活にガッツリ浸透している「ゆるキャラ」。いまや、警視庁の『ピーポくん』や熊本県の『くまモン』、千葉県船橋市の『ふなっしー』など、省庁や全国の自治体にもゆるキャラがいる状態で、その総数は1500を超えるという。

 先の自民党総裁選でも、高市早苗氏や小泉進次郎氏ら候補者5人全員の右胸に、ゆるキャラのバッジがつけられていた。とぼけた味わいがある卵型のロボットは『じみたん』という自民党の広報キャラクターで、今年春の立党70年を機に作られたという。

 自民党だけではない。

 実は今、各政党は無党派層を取り込むため、ゆるキャラを使ったプロモーションに余念がないのだ。そこで、本サイトは各政党の広報担当者を直撃し、ゆるキャラ誕生の裏側を聞いた。

 まずは自民党広報担当者に話を聞くと、先のじみたんに関しても「“かわいい”“ぬいぐるみが欲しい”といった声が自民党には届いています」と話す。

 さらに、「グッズ展開も検討しています」とのことで、

「中にはじみたんを題材にしたオリジナルのデジタルアートやぬいぐるみを作って、SNSに投稿してくださる方もいらっしゃるんです。その一部は自民党の機関誌『りぶる』で紹介もさせていただきましたので、ぜひご覧いただけますと幸いです」(前同)

 このじみたん、年齢も性別も不明だが、〈誰かを助けることが生きがい〉で、特技は〈いろんな形に変化できる〉ことらしい。気になるのは頭部から謎の物体が飛び出していることだが……。

「あれは、みなさんの声をキャッチするアンテナです。ぜひ、みなさんの声を自民党にお寄せください。政策立案や活動の参考にさせていただければと考えております。今後も、じみんたんをかわいがっていただければ幸いです」(同)

 そんな自民党と連立を果たして与党入りした日本維新の会も、ゆるキャラ『いしんのしし』を擁している。広報担当者を直撃すると、「もしキャラクター総選挙があるなら、1位を狙っていきます!」と意気込みを語った。

「2024年に一般公募を実施し、全国から400点を超える応募をいただきました。その中から最終候補4作品を選出し、当時の代表・馬場伸幸が最終選定を行い、いしんのししが誕生したのです。おかげさまで〈1周回ってかわいい〉〈もっと露出してほしい〉といったご意見をいただいております」(日本維新の会・広報担当者)

「維新なのに新選組ファン」というキャラ設定がSNSでイジられることもある、いしんのしし。HPに掲載された同キャラが登場する4コマ漫画では、「東京一極集中の弊害」「政治とカネの問題」など党の政策もさりげなく織り込んでいる。

「企画・構成は党内で行い、柔らかい表現で維新の理念や姿勢を自然に感じていただけるように工夫しています。いしんのししは今後の広報展開によっては大きな拡散力を持ち、党勢拡大にも寄与できる可能性を秘めたキャラクター。政策や時事への意見を自分の言葉で語る“発信型キャラクター”として成長していくことを目指しています」(前同)

 一方、連立解消によって野党となった公明党のキャラは『コメ助』。X、インスタグラム、フェイスブックにアカウントを持っているほか、アプリゲームや壁紙ダウンロードサービスなども充実させている。

 公明党の広報担当者に問い合わせると、次のように語った。

「より親しみを持ってもらうため、現在はオリジナルLINEスタンプ第3弾の制作、サイトの拡充、SNSを活用したコメ助グッズのアイディア募集などを考えています。コメ助の誕生日は12年9月13日。公明党の“こ(う)め(い)”をもじって、お米をモチーフに作られたゆるキャラなんです」

 2015年12月に開かれた中央幹事会の席上、コメ助は正式に党公認キャラクター兼公明党大使に任命される。以来、小さな体ながら八面六臂の活躍を続け、支持層を広げてきたという。

「“みなを元気に、みなを笑顔に、みなに信頼されるキャラクター”をモットーに、引き続き、より多くのみなさまに親しみを持ってもらえるよう、SNSの投稿などを続けていきます」(前同)

 ちなみに、最大野党の立憲民主党にはゆるキャラは存在しない。かつての民主党には、『民主くん』というゆるキャラがいたが、その後継となる国民民主党では現在、『こくみんうさぎ』が積極的なグッズ展開を行っている。

 また、れいわ新選組には、ゆるキャラはいないが、同党のボランテイア本部に「れボ」というキャラクターがいる。

 かように、各ゆるキャラはその政党のポリシーを色濃く反映させているのだ。