近年、日本の中高年の心を揺さぶってきた“老後2000万円問題”。事の発端は2019年6月に出された金融庁の報告書だ。全国紙社会部記者が解説する。
「高齢夫婦世帯は年金だけでは毎月約5万円の生活費が不足するとして、老後20~30年で1300万~2000万円が不足するという報告が出されました。
あまりに大きな額だったため、“老後の生活が送れないのでは”と国民が大きく反応。国会では、“表現が不適切だ”と当時の麻生太郎金融担当相が報告書の受取を拒否し、騒ぎは一気にヒートアップしたんです」
わずか6年と言えど、物価や賃金など、取り巻く環境は大きく変化。本当に必要な金額はいくらなのか、本サイトが徹底リサーチした。
そもそも、土台となる2000万円という金額について、最新データから“新たな基準”を、ファイナンシャルプランナーの高山一恵氏が導き出す。
「総務省の『家計調査報告』(2024年)では、約25万3000円の年金がある夫婦世帯では月の支出が、それを上回り、不足額は月3万4000円とされています。この赤字が30年続くと、合計額は1224万円。不足額として基準にするのは、これが現実的です」
“2000万円”という数字は、もはや古いと言えるが、独身男性の老後資金という視点で深く踏み込んでいくと、必要額はさらに低くなりそうだ。
というのも、日本人男性の平均寿命は約81.09歳。つまり、老後が30年続くという前提自体が、過大と言えるのだ。そこで、老後を20年とした場合、1224万円という数字も3分の2とすればよく、その額は816万円となる。
ただし、これは夫婦として必要な金額で、単身男性となればさらに低くなるが、単純に半分にはできない。ファイナンシャルプランナーの丸山晴美氏が説明する。
「24年の『家計調査年報』で、65歳以上の二人暮らしの支出に0.6を掛けると、単身世帯の支出と近似します。0.6には、数字的な根拠があると考えていいでしょう。単身者の場合、子供の養育.教育費などはかからず、一般的な老後を過ごすなら、500万円なくても大丈夫だと言えます」
816万円の6割というと、489.6万円。つまり、490万円が、単身男性における本当に必要な老後資金となりそうだ。