■最新AIが感情まで読み取り、即時翻訳してくれる

 注目を集めているのが、日本発の多言語リアルタイム翻訳サービス「CoeFont通訳」です。AIが音声を瞬時に解析し、翻訳後も話し手本人の声質や話し方を保ったまま、別の言語で再生するのが特徴。2025年9月にiOS版が公開されると短期間でダウンロード数を伸ばし、海外のアプリランキングでも上位に入るなど存在感を示しました。こうした実績が評価され、同サービスは2026年のトレンドを語る上で欠かせない存在として位置づけられています。

 背景にあるのは、生成AIの急速な進化です。OpenAIのgpt-4oに代表されるマルチモーダルAIは、音声や文脈だけでなく、感情のトーンまで読み取り、ほとんど遅延を感じさせない速度で翻訳を行います。会話の流れを止めることなく言葉が置き換わるため、翻訳を介している感覚が薄れ、「同じ言語で話しているようだ」と感じる場面も増えています。

 こうした技術革新を背景に、SNSでは「英語キャンセル界隈」という言葉が広がり始めました。英語習得に多くの時間を費やすより、AI翻訳を前提に専門分野の学習や創作活動に力を注ぐほうが効率的だと、タイムパフォーマンスを重視する若者や忙しい社会人の支持を集めています。

 2026年には、スマートグラスやイヤホン型デバイスと翻訳AIが連動し、視界に入る文字や周囲の会話がその場で自国語に変換される世界が現実になると見られています。海外旅行や国際イベント、オンラインゲームなど、これまで言語の壁が高かった場面でも、心理的なハードルは大きく下がるでしょう。一方で、英語を学ばなくてもよい社会が本当に成立するのか、議論の余地も残ります。

 ネット上では「英語が苦手でも海外とつながれる時代が来るのはありがたい」「翻訳精度がここまで上がるなら、勉強の負担は確実に減る」と期待する声が聞かれる一方、「ニュアンスや文化的背景まで本当に伝わるのか不安」「語学学習の楽しさが薄れるのでは」といった意見も…。

「多言語リアルタイム翻訳の普及は、語学教育のあり方や将来のキャリア設計にも少なからず影響を与えると見られます。ただ、言語は単なる伝達手段ではなく、文化や価値観を知るための入り口でもある。翻訳技術に頼り切るのではなく、目的や関心に応じて学びを続ける姿勢が重要ではないでしょうか。実際、AIツールが身近になった現在でも学生の英語学習意欲が大きく低下しているわけではない、というデータも発表されています。英語を“覚えるか、使わないか”という極端な選択ではなく、翻訳AIを学習の補助として取り入れ、効率よく使いこなそうとする意識が広がっているように感じます」(教育関係者)

「英語キャンセル界隈」がどこまで広がるのか。必死に覚える時代から、AIと共に使いこなす時代へ――2026年はその大きな転換点になるかもしれません。

トレンド現象ウォッチャー・戸田蒼
大手出版社でエンタメ誌やWEBメディアの編集長を経てフリー。雑誌&WEBライター、トレンド現象ウォッチャーとして活動中。