めまぐるしい変化を見せる国際情勢において、その変化のスピードは日々増していくばかり。いま、世界ではいったい何が起きているのか。元外務省主任分析官で作家の佐藤優氏が解説する。

――2月8日の衆議院議員選挙(総選挙)は、自民党が圧勝し、高市早苗政権が続くことになりました。この結果、どういう変化が生じるでしょうか。

佐藤:国民が高市早苗首相に事実上の白紙委任状を渡したことになるので、高市氏に権力が集中し、大統領型の政治を行うようになります。その結果、行政権が、司法権、立法権に対して著しく強化され、高市首相を直接支える内閣官房主導で行政が運営されるようになります。具体的には、内閣官房に設置された国家安全保障局と内閣情報調査室の力が強くなると私は見ています。

 官邸官僚においてはメリトクラシー(能力主義、成績主義)だけでなく、首相との属人的な近さが重要な要因になります。一種の家産国家化が起きると思います。家産国家とは、国家内のすべての関係が君主との私的関係とされ、領土や人民は君主の所有物とされるサウジアラビアのような国家を指しますが、ロシアのプーチン大統領やトランプ米大統領の政治スタイルは家産国家と親和的です。

 

――スパイ防止法は制定されるのでしょうか?

佐藤:制定されると思います。その過程で、通信傍受法の改正が行われ、行政機関が裁判所の許可を必要とせずに全ての人や組織の通信を傍受することができる行政傍受が合法化されると私は見ています。スパイの摘発を行うために行政傍受は不可欠ですが、傍受した通信の内容が証拠能力を持つようになり、逮捕、起訴が可能になるので、権力者の力が著しく強まるでしょう。

 

――外交はどうなるのでしょうか。

佐藤:ナショナリズムが政権を成り立たせる主要なエネルギーとなるので、近隣諸国(特に中国)との関係が緊張します。

 

――経済にはどういう影響を与えるでしょうか。

佐藤:経済的には、競争原理が推奨され、ネオリベラリズム(新自由主義)が加速します。自己責任論が強まり、社会福祉予算が削減されるでしょう。新NISAなどを活用した株式投資によって国民一人一人が将来に備える傾向が強まります。労働の対価によって給与や賃金を得る人よりも、土地、株、金(ゴールド)などの資産を持つ人に富が偏在していくようになるでしょう。日本人の生き残り本能が、高市早苗氏という個人のカリスマに賭けてみようという方向に傾いています。

佐藤優(さとう・まさる)
元外務省主任分析官、作家。同志社大学大学院神学研究科修士課程修了後、外務省入省。95年より外務省国際情報局分析第一課勤務。対ロシア外交の最前線で活躍し、「外務省のラスプーチン」の異名をとる。2002年5月に背任容疑で逮捕され、09年に最高裁で有罪判決が確定し失職。著書多数。