■半年かけての壮大な伏線回収

 松江では、トキ(高石)の幼なじみのサワ(円井わん/28)や、生みの親であるタエ(北川景子/39)と弟の三之丞(板垣李光人/24)など、周辺の人々が描かれることも多かった。熊本は一変して松野家に焦点が当てられ、トキとヘブン(トミー・バストウ)が夫婦に、ヘブンが松野家の家族になっていくストーリーが、いつものようにゆっくりと描かれていった。

 今週描かれた、妊娠とフィリピン赴任のキーワードは“建前と嘘”。トキもヘブンも互いを思うゆえに、“建前と嘘”を通していた。このキーワードは急に出たものではなく、松江でも錦織(吉沢亮/32)がヘブンに語っていた。そもそも序盤でヘブンが「ウソ嫌い」と言っていたのも明らかな前フリで、トキとヘブンの“建前と嘘”の変容を長い時間をかけて描いてきたのだ。なんと贅沢なドラマだろう。

 トキの妊娠もヘブンのフィリピン赴任も、さっさと言えば解決する話だったはずだ。しかし、トキとヘブンの間には、相手を思うゆえの優しい“建前と嘘”があった。だから、本心が出たときのインパクト、感動が深まった。この構成はうますぎるし、贅沢すぎる。こんな朝ドラは、今までなかったのではないだろうか。

 次週は、ヘブンの国籍問題がトピックで、トキとヘブンが本当の夫婦になっていくのを、ゆっくりと描くのだろう。3月はこれまで見てきた視聴者にとって楽しみが続きそうだが、予告にはヘブンが錦織(吉沢亮)を訪ねる様子があり、ほかにもサワ(円井)、タエ(北川)など、松江の人々の現状が描かれるのか、気になるところだ。(ドラマライター・ヤマカワ)

■ドラマライター・ヤマカワ 編プロ勤務を経てフリーライターに。これまでウェブや娯楽誌に記事を多数、執筆しながら、NHKの朝ドラ『ちゅらさん』にハマり、ウェブで感想を書き始める。好きな俳優は中村ゆり、多部未華子、佐藤二朗、綾野剛。今までで一番、好きなドラマは朝ドラの『あまちゃん』。ドラマに関してはエンタメからシリアスなものまで幅広く愛している。その愛ゆえの苦言もしばしば。