相撲界の内情や制度、騒動の行方を、元関脇・貴闘力が現場目線で読み解く。経験者だから語れる、大相撲のリアルが詰まったコラム。
大相撲春場所も中日を過ぎた。「綱取り」の大関・安青錦らが土俵を盛り上げているものの、またもや角界で暴力事件が起こって、波紋が広がっている。
事の真相は、こうだ。
春場所のため、大阪に乗り込む前の2月下旬、元横綱・照ノ富士の伊勢ヶ濱親方とタニマチ、幕内・伯乃富士らが酒宴に招かれた。その席で、伊勢ヶ濱親方は弟子の伯乃富士を酒瓶で殴り、顔が腫れ上がったという。
角界での暴力騒動は、後を絶たない。近年だと、巡業中に横綱・日馬富士が幕内・貴ノ岩をカラオケ店で殴打。当初、貴ノ岩は殴られた事実を師匠の貴乃花親方に隠していたのだが、当日の模様が明らかになり、日馬富士は暴力を理由に急遽、現役を引退した。
また、幕内・逸ノ城は、酒を飲んで所属部屋のおかみさんを殴ってケガをさせたことで、引退を余儀なくされた。その前には、時津風部屋の若い力士が稽古場でリンチに遭い、死亡。師匠の時津風親方(元小結・双津竜)は、監督責任を問われて、退職。
オレが現役の頃は、師匠や兄弟子に殴られたりするのは日常茶飯事だったが、今はまったく違う。「暴力の廃絶」を合言葉に浄化に躍起になっている相撲界だが、師匠が弟子を殴るという最悪の出来事が起こってしまった。
弟子の暴力を隠蔽して部屋の閉鎖に追い込まれた白鵬の例もあるから、伊勢ヶ濱親方は番付発表の日(2月24日)に、大阪から東京の相撲協会に出向いた。
殴られた伯乃富士と、当時、現場に居合わせた錦富士も証人として連れて行き、事態を報告。ただ、コンプライアンス委員会などの判断もあるため、正式な処分は春場所後になるという。伊勢ヶ濱親方は、春場所は休場し、親方業務に携わらないことになった。