急激な物価高が庶民の懐を直撃している。1000円超えが当たり前になりつつある外食ランチ、200円近い夕刊紙や缶コーヒーまで我慢し、再三にわたるタバコ値上げにも頭を抱えている人が、きっと多いはずだ。このようなインフレはいつまで続くのか。30年前の物価との対比をしつつ、専門家たちの意見を聞いた。

 ファイナンシャルプランナーの高山一恵氏は、「イラン情勢の悪化によって暮らしは、さらに厳しくなる恐れがある」と分析する。

 実際、アメリカとイスラエルがイラン攻撃を開始して以降、株価は乱高下。世界経済は不安定さを増している。

「特に影響が大きいのは、ガソリンですね。3月8日にはニューヨークの原油先物相場が1バレル=110ドルを突破しました。これは、ロシアによるウクライナ侵攻があった2022年以来の水準です」(前同)

 日本国内でもガソリン価格のさらなる高騰を控える状況で、「3月初めの時点で全国平均価格は1リットル150円台とされていますが、“今月中に1リットル200円を超える”と宣言しているガソリンスタンドもあるほど」(全国紙社会部記者)だという。

 原油価格が上がればトラックや航空機などの物流費も上がる。そのため、スーパーやコンビニの棚にある商品は軒並み、値上げを余儀なくされるだろう。

「電気代やガス代などの光熱費も原油価格に連動して、2割ほど上昇するという見通しもあります。
 また、現在は物価高対策として政府は電気とガスに関して補助金を出していますが、4月からは、これが完全になくなります。この影響もあるはずです」(前出の高山氏)

 政権を盤石のものとしている高市早苗政権の経済政策も、4月からの値上げラッシュに拍車をかけそうだ。

「高市総理は積極財政を打ち出しており、物価上昇に負けないベースアップの実現を掲げていますが、当然、それはインフレありきの政策。全員が十分な賃上げの恩恵を受けられるわけではないため、物価高に苦しむ人も増えるでしょう」(前出の全国紙記者)

 その賃金については、今年の春闘で、マツダが満額回答の月1万9000円上昇を発表するなど、先行した大手企業は上々の滑り出しを見せているようだ。

「ただ、日本は中小企業のほうが圧倒的に多いですからね。売り上げ拡大や業務改善が十分に進んでいない企業も多く、収益が伴わないまま賃上げを実現するのは、現実的に難しい。無理をすれば人件費の高騰が経営を圧迫し、倒産する恐れもあります」(高山氏)

 このようなジレンマに加えて、労働者にとっては退職金の下落ぶりも大きな痛手だ。経済アナリストの森永康平氏が話す。

「2000年頃は2500~2800万円くらいが一つの目安だった退職金が、今は2000万円を割り込む水準になっている。

 中小企業も含めた本当の意味での平均は、1000万~1500万円くらいまで下がっているかもしれません」

【後編】円安直撃『CoCo壱番屋』は1000円超が当たり前、回転寿司も1皿100円の店は消滅 30年前とはこんなに違う「物価上昇率」一覧では、租税負担率と社会保障負担率の占める割合「国民負担率」が30年前に比べると10%以上も上がり、46%以上も搾取されている実態なども詳報する。

《【後編】はこちらから》

高山一恵(たかやま・かずえ)
ファイナンシャル・プランナー(CFP)、Money&You取締役。一般社団法人「不動産投資コンサルティング協会」理事。月400万PV超のウェブメディア「Mocha(モカ)」やYouTube「Money&YouTV」を運営。著書に「11歳から親子で考えるお金の教科書」(日経BP)など。

森永康平(もりなが・こうへい)
経済評論家・森永卓郎氏の長男として、1985年に埼玉県所沢市で生まれる。2007年に明治大学政治経済学部を卒業後、SBIホールディングスに入社。アナリスト・ストラテジストとして活躍し、18年6月には金融教育を普及させることを目的としたベンチャー企業「株式会社マネネ」を設立。親子で学べる金融教育セミナーを全国で開催し、幅広い層に対して金融リテラシー向上のための支援活動を行っている。経済・金融教育のスペシャリストである一方で、キックボクシングと総合格闘技の試合にも挑む“戦う経済アナリスト”として知られ、テレビやラジオへの出演、各種メディアや書籍での執筆など、幅広く活動中。