日々、若者文化や社会問題を研究するトレンド現象ウォッチャーの戸田蒼氏。そんな戸田氏が今、注目するのはAIフード。生成AIが描くような料理が本当に食べられる……それはいったい、どんなものなのか――。

 スマホの画面をスクロールする指が、思わず止まる。そこにあるのは、光を透過して七色に煌めくゼリーや、水晶のように透き通ったプリン。あまりの完璧さに「どうせ生成AIが作った架空の画像だろう」と切り捨てそうになりますが、実はこれ、実際に作られ、食べられている「本物」の料理なのです。

 もともとSNSでは、生成AIが描く「物理法則を無視した非現実的な料理」が人気を集めてきました。しかし今、その流れに大きな変化が起きています。レシピ動画メディア「デリッシュキッチン」が発表した「2026年の食トレンド予測」において、まさにこの「AIフード」がキーワードとして選出されたのです。

 これまでのデジタルと食の関わりといえば、献立の提案や効率化といった「実用性」が主流でした。ところが現在は、AIが生成した「ガラスのような透明感」や「あり得ない造形」に触発されたクリエイターたちが、「どうすればこれを現実で具現化できるか」と知恵を絞る、表現の逆転現象が起きています。

 こうしたトレンドのきっかけを遡ると、TikTokのフィルター「AI Food Lotto」などで現れる架空の料理を、実際に作って比較する動画が世界的にヒットした背景があります。

 この「AI級の美しさ」を現実の皿に落とし込む作業には、アガーや琥珀糖、エディブルフラワーといった材料を緻密に組み合わせる高度な技術が必要不可欠。腹を満たすという目的を超え、デジタル上の幻想を物理的な質感へと変換する「答え合わせ」のような楽しみが、感度の高い若者世代を中心に支持されているようです。