■早くも共感を獲得した『時すでにおスシ!?』
子どもが巣立ってできた、心のスキマを抱える50代の女性が、第二の人生を始めようと、鮨職人を目指すことで再生していく物語。地味といえば地味で、キラキラした要素は正直、ほとんどない。内容も初回の状況説明とあって、自分のために一歩踏み出してからの、クラスメイトの意識や熱意との差から挫折、そこからの再起という定番展開だった。
しかし、これが実によくできていたのだ。“これからどう生きるか”を探している普通の主婦を演じる永作(待山)も、堅物だが一生懸命に生きている鮨職人を演じる松山(大江戸)も、しっかりキャラ立ちしていたし、コミカルと泣かせのバランスが抜群。展開も過不足なくテンポがいいので、内容がスルスル入ってきた。
特にラスト。みなとが鮨アカデミーをやめようとしたとき、大江戸(松山)がどんな言葉を投げかけて引き止めるのかと思ったら、「待山さんの手は何千、何万回と相手を心から思って料理を作ってきた。そんな手に見えました」と告げた。育児終了からの再生というメインテーマにしっかりかぶせてくる、そのわかりやすさとうまさに感心した。
演者も手練ならスタッフもだ。24年10月期放送『マイダイアリー』(テレビ朝日系)で第43回向田邦子賞を満場一致で受賞している兵頭るり氏の脚本、24年10月期放送『ライオンの隠れ家』や前期放送『リブート』(ともに当局系)を手掛けた坪井敏雄氏の演出など、プロの仕事を見た感じだ。
さらに注目すべきは、主人公への共感度が高いこと。こういう作品はスタートこそ地味ながら、口コミの評判で数字がじわじわ伸びてくることが多い。笑えて、泣けて、背中を押してくれそうな本作は、この春一番のダークホースかもしれない。(ドラマライター・ヤマカワ)
■ドラマライター・ヤマカワ 編プロ勤務を経てフリーライターに。これまでウェブや娯楽誌に記事を多数、執筆しながら、NHKの朝ドラ『ちゅらさん』にハマり、ウェブで感想を書き始める。好きな俳優は中村ゆり、多部未華子、佐藤二朗、綾野剛。今までで一番、好きなドラマは朝ドラの『あまちゃん』。ドラマに関してはエンタメからシリアスなものまで幅広く愛している。その愛ゆえの苦言もしばしば。