■打つだけじゃダメ 看板選手の“条件”

 テル(佐藤輝明)の1年目も、どちらかと言えば、“クルッとクン”でした。当たれば、どこまでもボールが飛んでいく反面、ボール球にも反応してしまい、三振の山を築いたのも事実です。

 私が監督だった2年間、テルには何度も、こう伝えたものです。

「おまえには振る怖さはある。しかし、振らない怖さが、まるでない」

 それが、昨シーズンのテルは一転。明らかにバッティングスタイルが変わりました。やみくもにバットを振るのではなく、しっかりボールを見極め、きわどい球を悠々と見逃す。タイミングを外されても体が突っ込むことはなくなり、きっちりボールを芯で捉えられるようになったんです。

 その結果が40本塁打、102打点という数字です。打率も過去最高の2割7分7厘をマークしました。

 そんなテルには昨季、大きな変化がありました。それは守備力の向上です。

 定位置の三塁の守備で、一昨年は23失策。それが昨年は、わずか6失策です。課題とされていたスローイングも安定しました。

 私は本塁打と打点のタイトルを取ったことよりも、ゴールデングラブ賞を取ったことのほうを評価しているんです。テル本人にも「ゴールデングラブを取って一人前だぞ」とハッパをかけてきました。

 チームのレギュラーである以上、「打ちゃあ、いいんだろう」は許されません。守備固めの選手と交代させられているようでは、看板選手なんて夢のまた夢です。

 昨季は明らかに一皮むけたテルですが、オフには随分、話題を振りまいていたみたいですね。本人もメジャーへの移籍願望を公言していますし、そのつもりでしょう。ただ、それには三冠王を取るくらいの活躍をして、チームを日本一に導かないと。ファンからも球団からも「行ってこい」と送り出されるような形で、メジャーの扉を開いてほしいものです。

矢野燿大(やの・あきひろ)
1968年12月6日生まれ。90年ドラフト2位で中日ドラゴンズへ入団。97年オフにトレードで阪神タイガースへ移籍すると、正捕手としてチームの躍進を支え2度のリーグ優勝に貢献。