■万引きGメンはここを見る!!
技術の進化とともに犯罪の手口も変化している。
セルフレジと、その進化形とも言えるレジ付きカートを悪用する方法もある。
「買い物客がレジ端末付きのカートを押しながら、自分で商品バーコードを読み取り、そのまま決済まで完了できる仕組みで、レジに並ぶ手間を減らせる便利なシステムとして広がっています」(夕刊紙記者)
だが、その便利さの裏に、抜け道が生じていた。
「商品をスキャンしたあとで端末を操作し、購入をキャンセルし、そのまま持ち去る人がいるんです。
複数入り商品を少なく計上したり、高額商品を隠すために、上に安い商品を載せて、確認ゲートをすり抜けるケースもある。そもそもスキャンせず、カゴごと持ち出す『カゴ抜け』という手口もあります」(前出の万引きGメンの伊東ゆう氏)
パッと見では、普通の買い物客と変わらない。高額商品をカートの下に沈め、その上にトイレットペーパーや箱物を載せれば、店員の視線からは隠れやすい。しかも、レジカートを使っている時点で「会計するつもりでした」という体裁まで整ってしまうのである。
では、そんな不正を、凄腕ハンターの万引きGメンはどう見抜くのか。
「後ろから見ていると、“この人、なんか怪しいな”と分かることがあるんです。悪いことをしている人は、やはり、どこかに違和感が出る。その“何か、おかしい”を拾うのが、我々の仕事ですね。
理屈では説明しきれなくても、気になって見ていたら、やはり、やったということは多い。いわば“匂い”みたいなものです」(前同)
プロが言う“匂い”。それは顔や目線、動きの端々に、にじみ出るという。
「後ろを確認したがりますし、怖い顔をしていることが多いですね。緊張感がマックスになっていて、慌てている様子というか、けっこうギラギラしている。周囲の動きにも逐一、目がイッていて、潜水艦のように周りを見渡すんです」(同)
視線の配り方に、はっきり違いが出るのだ。
「普通のお客さんは、だいたい斜め下とか横を見るんです。商品があるから当然ですよね。でも、万引きをする人は、まっすぐ見るんですよ。視野を広くしたくなっちゃうから、目が大きくなる。見開いちゃうんです。だいたい、そういう人とは目が合いますね」(同)
手つきにも独特のクセがあるという。
「動きが速かったりもするし、商品を手に取るときも、お金を払うつもりではないので目で見て選ばなかったりします。だから値段も気にならないし、個数が多くても平気なんです。
見られたくないという心理があるから、横を向きながら手が出たりする。手つきも独特で、私はそれを“バードハンド”と名付けているんですけど、鳥の手みたいになるんですよね」(同)
欲しいのは商品ではなく、持ち出すという結果だ。だから手が早く、動きも雑になる。その違和感を、プロは見抜くのである。
伊東氏は、今後の万引きについて、こう話す。
「しばらく増加傾向は続くでしょう。ただ、防犯意識は高まっており、店側も黙認しない姿勢に変わりつつある。セルフレジにただ立っているのではなく、その場の声かけや未然に止める仕組みづくりが、本当の意味での防犯につながっていくでしょう」
物価の高騰が続くが、万引きは劣悪な犯罪であることを肝に銘じたい。
伊東ゆう(いとう・ゆう)
万引き対策専門家、万引きGメン。およそ26年にわたって6000人を超える万引き犯を捕捉してきた経験を有する現役の保安員。作家、ライター、漫画原作者としても活動しており、2011年にデビュー作『万引きGメンは見た!』(河出書房新社)を上梓すると大きな話題を呼び、多数のメディアで特集された。現場で活動する一方、香川大学、香川県警と共同で「店内声かけマニュアル」「セルフレジサポーター育成マニュアル」の原案、監修を手掛けるなど、万引き被害の未然防止対策に情熱を傾ける。現在、香川大学特別講師や東京海上日動火災保険株式会社などのSV(スーパーバイザー)も務める。