■第1話に散りばめられた“伏線” 岡田将生演じる真がみた「後ろ姿」
最後に、第1話で「伏線」になっていそうなもの。事件当日、兄の真(岡田将生)は、二階の窓から逃げる犯人の後ろ姿を見ている。そして、弟の稔(染谷将太)は、腕を切りつけられていた。これは、兄は、逃げる姿だけでも「目撃」、そして弟も、切られたときに、犯人を見た確率が高い。特に弟の稔の場合は、第1話中、ひき逃げ事件で気づいていたことを、後で兄へ報告するシーンがあった。もしかしたら稔は、犯人の目星がついており、ただその確証がなく、その証拠をすでに探している段階にあるという線も考えられる。
こう考えたのは、公式HPの新井Pのインタビューに、「主演の2人にだけ、犯人が誰かを告げている」とあったからだ。
演技をする上で、真犯人が誰かを知っているか否かは重要になってくる。同じ理由で、兄の真も、何らかの見当がついていてもおかしくない。だが同時に新井Pは、ミスリードも上手い。例えば兄が当たりをつけた相手がミスリードで、稔の方が正解。あるいは、何らかの形で稔の方にもミスリードがあり、真相という面で、井川遥扮する晴子がトドメを刺すという展開が最も濃厚である。
そもそも論、ドラマ作りにはさまざまな手法があるが、新井Pの作り方を考えると、第1話の事件の「構造」自体が、物語全体の「構造」のミニマム版として機能させるという構成を選択していそうだ。なぜなら、今回は特にきっちり丁寧な物語づくりをしていることが感じられたから。例えば本作の主人公たちの名字は「田鎖」。第1話ラスト付近で、稔が「僕たちはずっとあの事件に“縛られている”」と発言しており、それは「鎖」を思わせる。
これだけハッキリと、「あまり無駄なシーンや名前やセリフはなく、そのどこかに意味がありますよ」と提示される作品は珍しい。ゆえに、主演2人にだけ真犯人を告げていることにも意味があり、その前提でミスリードを用いながら岡田と染谷が芝居をしているはず──。
そういった意味で、この第1話の構成、セリフ、稔の仕草、晴子の動向はしっかり見ておいてもらいたい。それがこのドラマの「考察」をより楽しめる秘訣になりそうだ。これらは憶測に過ぎない。だがこのように第2話以降も、新井Pに“振り回されて”みたい。
衣輪晋一(きぬわ・しんいち)
メディア研究家。雑誌『TVガイド』を経て制作現場を直接、長年見た経験とインタビュー経験から、多くのエンタメコンテンツを執筆。現在『マイナビニュース』『オリコンニュース』をはじめ、昨今では『東洋経済オンライン』でビジネス系のメディア研究も。写真集『堂本剛の正直I LOVE YOU』企画発案。元『メンズナックル』コピーライターなどサブカルにも通じる。制作会社でドラマアドバイザーを務めた経験もある。