■「細かいところをいちいち視聴者が知る必要があるのかと」元キー局Pの見解

 鎮目氏は続ける。

「細かい話は、警察など捜査関係者が調べるなら大事なことですけど、そんな細かいところをいちいち視聴者が知る必要があるのかと。取材をした上で“新しい事実”が出たら、報道すべき話かを深く考えずに何でもやってる感じがします」

 当初、世間の人々は結希さんの無事を心配したり、なぜ行方不明になってしまったのかを考えながらテレビを見ていた。その後、父親が死体遺棄の容疑で逮捕され、その後に殺害を認める供述をしたのだが――、

「世間が次に知りたい事実は、“なぜ父がそんなことをしてしまったのか”と“どうすれば止められたのか”の2点。これらに関心が絞られているのに、それ以外をしつこくやるのはどうなんだと。

 それに、亡くなった子にも母親がいますよね。再婚相手が自分の息子をおそらく殺害したうえで、遺棄したことに強くショックを受けているのは間違いない。それなのに毎日のように細かいことまで報道されたら、余計に母親が傷つくのは誰でも想像できる。さらに言えば、事件が起きた南丹市の人たちも傷ついているでしょう。

 つまり、現在の報道姿勢では誰も得をしないわけで……常見教授の発言は、多くの日本社会を生きている人たちの気持ちを代弁していて正しいと思います」

 鎮目氏は「もちろん、今後に具体的な殺害動機が出たりすれば報じるべきだと思います」としつつ、「そうなるまでは報道を続ける意味はないですよね」と語った。

「地震や災害、海外の戦争とか、他に報じるべきことはいくらでもある。それをやるべきで、細かすぎることを今日の事件でやるべきじゃないことは、テレビ局としてわかっているはずなのに、それがわかっていない感じだから世間の心が離れている。だから玉川さんの意見は一面はあっているけど、ある意味で非常に間違っていると思います」

 また、テレビ番組が京都の事件を報じ続けることに“視聴率目当てでは”という声が出ていることについても尋ねると、

「結局、そこが見えているんですよね。さっき述べたように関係者が傷ついていくのにやる理由って、誰がどう考えても“視聴率が取れるから”だというのがわかってしまう。それをキャッチできていないというか、視聴者の気持ちが離れていってることすらわからないのかと」

 と、見解を示した。

 京都府南丹市の男児遺体遺棄事件の報道は、今後も多くの意見を呼ぶだろう――。

鎮目博道
テレビプロデューサー。92年テレビ朝日入社。社会部記者、スーパーJチャンネル、報道ステーションなどのディレクターを経てプロデューサーに。ABEMAのサービス立ち上げに参画。「AbemaPrime」初代プロデューサー。2019年独立。テレビ・動画制作、メディア評論など多方面で活動。著書に『アクセス、登録が劇的に増える!「動画制作」プロの仕掛け52』(日本実業出版社)『腐ったテレビに誰がした? 「中の人」による検証と考察』(光文社)