日々、若者文化やトレンド事象を研究するトレンド現象ウォッチャーの戸田蒼氏が、本サイトで現代の時流を徹底解説。いま戸田氏が注目するのは、世界で増えている新たな働き方についてだ。
世界の企業がオフィス回帰の動きを進める中、従業員たちの間で新しいワークライフが広がりを見せています。それがオフィスに出社して入退館記録を残し、同僚とコーヒーを一杯飲む程度の短い時間だけ滞在した後、残りの業務は自宅やカフェでこなす「コーヒーバッジング」と呼ばれるスタイルです。
この言葉は「バッジ(入退館記録)」と「コーヒー」を組み合わせた米国発の造語で、企業の出社要請に対する従業員側の防衛策。米国の調査機関アウル・ラボの2024年レポートによれば、ハイブリッドワーカーの44%がこの行為を経験済みと回答しており、すでに労働者の半数近くに浸透している実態が浮かび上がっています。
実際のところ、国内でも大手企業を中心にフルリモート制度が見直され、週の半分以上の出社を義務付けるケースが増加。これに伴い、「午前中だけオフィスで仕事の姿勢を見せ、午後からは外回りと称して近所のカフェや自宅で作業する」といった、実質的なコーヒーバッジングに走る会社員が水面下で増えているのが現状です。
なぜ、このような移動を伴う働き方が、世界的なトレンドになっているのでしょうか。背景にあるのは、企業が進める出社回帰の方針と、働く側の「在宅勤務でも十分に成果を出せる」という認識とのミスマッチ。一度リモートワークを経験した労働者にとって、満員電車に揺られる通勤時間や、オフィスでの突発的な雑務は不条理に思えるのです。
さらに、子育てや家族の介護、自己啓発といった個人の生活時間を確保したいというニーズも重なり、妥協点として行き着いたのが「出社実績を作る」という選択。1日あたりにかかる外食代などのコストや、長時間のオフィス滞在による時間的・体力的なロスを抑えたいという心理も、“即直帰”という行動に拍車をかけているようです。