日本競馬界のレジェンド・武豊が名勝負の舞台裏を明かすコラム。6月20日の函館5Rではファサに、翌21日の函館1Rではハッピーローヴァーに騎乗予定の、彼のここでしか読めない勝負師の哲学に迫ろう。
(以下の内容は2026年6月15日に寄稿されたものです)
東京競馬場を舞台に行われた5週連続GIの締めくくり、第76回安田記念をシックスペンスで勝利!
馬にとっても、チーム・シックスペンスにとっても、僕にとっても、最高の1日になりました。
「豊さん、ウチの馬をお願いできますか?」
電話をくれたのは、田中博康調教師。騎手時代から海外の競馬に興味を持ち、フランスで修業。何度も食事を共にしたことのあるホースマンです。
予定していたアドマイヤズームが、右前脚の爪を痛めて出走回避を決めたのが、レース6日前の月曜日。田中調教師から電話をもらったのが水曜日。
今年の安田記念はお休みだろうなと思っていたところにいただいた騎乗依頼ですから、NOという返事はありません。
直近3戦は、思うような結果を残せずにいましたが、GIIの勲章を3つも持っている力のある馬です。“良い馬が回ってきた”と、内心、一発を狙っていました。
3つの重賞で手綱を取っていたクリストフ(ルメール騎手)に話を聞き、レース前は、調教師と打ち合わせ。スタート次第ではハナを切ってもいいかなというくらいの気持ちで、ゲートに入りました。
道中は逃げるワールズエンドを見る形で、2番手を追走。繊細で折り合いに難があると聞いていたので、とにかくリラックスして走らせることを最優先に考えていました。
最後の直線、前を走る馬はなかなか止まらないし、後ろからは、1番人気のガイアフォースが猛烈な脚で迫って来ます。
最後の最後は、ラスト1完歩の勝負。
闘志をむき出しにし、グイッと力強く首を伸ばした先がゴール板でした。