■若者が抱えるNISA貧乏の背景事情を【CFPが解説】
──20代や30代の若者を中心に将来への不安から生活を切り詰めてまで投資に走る人も少なくありません。この背景にはどのような事情があるのでしょうか。
主な背景は「将来不安」と「焦りの心理」の2つです。まず、年金制度への不信や物価上昇による購買力低下への懸念が、若年層に「自分で備えなければならない」という意識を強めています。預金だけでは資産価値が目減りするとの認識も広がり、投資が“必須行動”と捉えられやすくなっています。
加えて、SNSやネット証券の普及により投資情報が氾濫し、「乗り遅れたくない」という不安が投資行動を加速させています。結果として、自分の収入や家計に見合わない投資額を設定してしまうケースが生じます。
新NISAの普及で、投資が以前より身近になりました。本来は良い流れなのですが、家計全体を見ずに積立額だけ先に固定する人も増えています。その結果、日々の生活費、交際費、急な出費に対応する余力がなくなり、いわゆる「NISA貧乏」のような状態に陥るわけです。投資そのものが悪いのではなく、将来不安の解消を投資だけで行おうとする発想が、無理な家計運営につながっているのだと思います。
──ライフプランが明確ではない20代や30代の内から、私生活を犠牲にしてまで投資を行う必要はあるのでしょうか。
結論から言えば、私生活を犠牲にしてまで投資を優先する必要はありません。もちろん若いうちから積立投資を始めること自体は有利です。時間を味方につけられるからです。ただ、20代や30代は、結婚、転職、引っ越し、資格取得、出産など、将来の選択肢が大きく動く時期でもあります。
この時期に大切なのは、金融資産の残高だけではなく、人生の自由度を保つことです。たとえば交際費や自己投資を極端に削ってしまうと、人間関係や経験の機会を失いかねません。結果として、人生全体で見た満足度が下がることもあります。
投資額は「余ったお金で決める」のではなく、生活費・緊急予備資金・近い将来の支出を確保したうえで、無理なく続く額にするのが基本です。資産形成は長く続けてこそ意味があります。だからこそ、日常を壊すような積立額は見直すべきです。
【記事後編】では若者が行うべき“鉄板”の投資方法や投資を進めるうえで有効な日経新聞の読み方をCFP・宮岡秀峰氏が解説する。《【記事後編】はこちらから》
宮岡秀峰(みやおか・しゅうほう)
公認会計士、税理士、行政書士、CFP資格(日本やアメリカなど世界各国・地域で認定されている国際的なファイナンシャル・プランナーの最上位資格)。税理士法人アクシア代表社員、アクシア公認会計士事務所代表。公認会計士として会計・財務の視点から中小企業支援に取り組むほか、相続・事業承継分野にも幅広く携わる。講演や税務相談の実績も豊富で、会計・税務分野の書籍共著、雑誌寄稿も行なっている。
税理士法人アクシア 公式HP:https://axia.or.jp/