相撲界の内情や制度、騒動の行方を、元関脇・貴闘力が現場目線で読み解く。経験者だから語れる、大相撲のリアルが詰まったコラム。

 6月13日、14日、大相撲一行による「パリ公演」が31年ぶりに行われた。

 夏場所で休場した両横綱、安青錦や大関陣も元気に参加して、幕内力士によるトーナメント戦は大いに盛り上がった。

 基本的に、外国人はトーナメント戦が大好き。相撲の内容はともかく、派手なパフォーマンスや技には大歓声が上がる。

 31年前、1995年10月に行われた「ウィーン・パリ公演」には、オレも現役力士として参加した。

 10月6日に日本を発って、まずオーストリア・ウィーンへ。2日間の公演やパーティなどの公式行事をこなして、10日にフランス・パリへ。パリでも取材やパーティ、3日間の公演と続いたが、人気の“若貴曙”がそろっていたため、連日大入り満員。大盛況に終わった。

 そんな盛況の裏で、オレらがパリに着いた翌日、大変なことが起こっていた。パリのシャルル・ド・ゴール空港の倉庫に保管されていた、公演で使用する道具一式が火事で焼けてしまったのだ。

 化粧まわし、締め込み、明け荷、行司さんの装束などがなければ、公演は中止にせざるをえない。

 急遽、日本に事情を伝えて、別の化粧まわしや締め込みを送ってもらって、なんとか本番には間に合ったのだが、化粧まわしを1本しか持っていない若手力士もいて、他の力士のものを借りて、なんとか急場をしのいだ。

 それにしても、化粧まわしは1本100万円以上はするし、締め込みだって50万円はくだらない。被害総額は10億円くらいに上ったと聞いた。