■何度も見直したくなる見事な演出

 事前情報が極めて少なく、放送前は誰が初回で退場するのかが話題になっていたが、それが吹き飛んでしまうほど、衝撃のラストだった。樹生(中島)が、あずさ(夏帆)の不倫を事故が起きる前から疑っていたと知ったことで、「あの場面ではどんな表情をしていたのか」と知りたくなって、最初から配信で見直したくなる。

 第3金曜日に充(松山)が出かけるとき、その後ろをつけていたスーツ姿の男の正体。咲子(蒼井)の自宅があずさの不倫相手の家だと知ったときの樹生の表情、など。さらに、あずさや充がどんな表情で、妻、夫と話していたのか……。これらを確認したくなるのだから、TVerの数字が伸びないわけがない。まさに演出、脚本の大勝利だろう。

 いなくなった人をめぐっての物語、という点では、本作は『海のはじまり』に似ている。海(泉谷星奈/9)を残して亡くなった水季(古川琴音/29)のように、あずさも充も、これから回想の形で出てきて、隠していたことがだんだん明らかになっていくのだろう。フィナンシェを“好き”、“嫌い”の食い違い。三島由紀夫の小説『愛の渇き』など、回収されていない伏線もまだまだ多い。見直したくなる展開が続きそうだ。

 とりあえず初回のつかみは100点満点と言えるだろう。TVerのお気に入り登録数が最高値199.5万と、フジテレビで『silent』に次ぐ大ヒットなった『海のはじまり』を、『Tシャツが乾くまで』が超えるかもしれない。次回、咲子は樹生と共に、事故の日までのあずさと充について調べ始める。

(ドラマライター・ヤマカワ)

■ドラマライター・ヤマカワ
編プロ勤務を経てフリーライターに。これまでウェブや娯楽誌に記事を多数、執筆しながら、NHKの朝ドラ『ちゅらさん』にハマり、ウェブで感想を書き始める。好きな俳優は中村ゆり、多部未華子、佐藤二朗、綾野剛。今までで一番、好きなドラマは朝ドラの『あまちゃん』。ドラマに関してはエンタメからシリアスなものまで幅広く愛している。その愛ゆえの苦言もしばしば。