■第1位は、日本の映画ポスターが“ダサい”のはなぜ
1位 「センスない」日本の映画ポスターが“ダサい”のはなぜか シンプルな海外版と比べ“エモさ推し”する切実事情 『トイ・ストーリー5』でも「違和感」
弱冠21歳の新鋭監督が手がけ、本国アメリカでは公開3日間で興行収入8140万ドル(約132億円)を記録した、2026年注目のホラー映画『Backrooms』(2026)。日本公開日が9月4日に決定し、早くも映画ファンの期待が高まるなか、6月29日に解禁された“日本版ポスター”を巡りちょっとした騒動が巻き起こっている。
まず同作は、どこまでも続く黄色い壁紙の部屋、終わりのない廊下、不自然な間取りなど、いわゆる“リミナルスペース”を舞台とする物語である。
2019年5月12日、英語圏の匿名掲示板「4chan」に、何の説明もない1枚の「黄色い部屋」の画像が投稿された。その不穏な雰囲気に惹かれたユーザーたちが想像を膨らませ、ネット上で都市伝説化。この掲示板の投稿内容をベースにした短編映像を、当時16歳だったケイン・パーソンズ氏(『Backrooms』の監督)が22年1月7日、自身のYouTube上に投稿したところ大バズリ。26年7月8日までに視聴回数約8980万回を突破した。9月に公開されるのが、これの映画版である。
さて、そうした“説明しすぎない余白”が醸す恐怖を持ち味とした作品だが、海外で出回っているポスターは世界観そのままにシンプルなデザインである一方で、日本版ポスターには「都市伝説から生まれた全米No.1スリラー日本上陸」「今、恐怖の定義が変わる」といった宣伝文句がいくつも踊るのだ。それを受けてXでは、
《アメリカ版ポスター、韓国版ポスター、台湾版ポスター、これらの世界中のポスターはシンプルでオシャレなのに、日本のバックルームズのポスターだけやっぱ文字数多く情報量過多でダサくなる》
という投稿があり、投稿のあった6月29日以来約1410万回表示(7月9日現在)され、《日本人って致命的にデザインセンスがない》《情報詰め込み型なのは昔から変わらないよね…》などの共感が多数集まってしまうことに。
もちろん《元のポスターはぱっと見でどんな映画かわからん》《広告としては正解なのでは》と日本版に理解を示す声もあるが、なぜ日本版ポスターは“ダサい”と言われてしまうのか──。業界事情に詳しい映画批評家・前田有一氏に解説してもらった。
「海外では、『ティザーポスター』という予告用ポスターが数種類用意されることが珍しくありません。公開前から少しずつ期待感を高めるため、あえて詳細を伏せ、“謎を呼ぶ”ビジュアルにするのが特徴です。特に最近はSNS時代ですから、宣伝戦略として情報を断片的に出し、考察や話題作りを促すデザインがトレンド。タイトルすら載せないものもあるほどです。今、SNSで話題になっている『Backrooms』のポスターはティザーポスターの典型ともいえ、劇場用はまた別に作られるのではと思います。
一方、日本のポスターは、じわじわ話題というよりも一発で『集客効果』を狙う。これは予算の都合が大きいです。特に『Backrooms』のような中小規模作品は宣伝費用が限られ、少ない手数で(観客の)最大公約数を取るためには、センスが良くないのを承知だとしても、アピールできる情報を全部載せるのが“安全牌”と考えるわけです」(前田氏)
洋画の日本版ビジュアルに対する不満は、今作に限った話ではない。たとえば7月3日に公開された『トイ・ストーリー5』(2026)では、海外版が物語のメインを担うジェシーを中央に配置しているのに対し、一部日本版ではシリーズの象徴であるウッディとバズを大きく押し出し、ファンからは《ウッディとバズが真ん中なの違和感しかない》《もうちょっと日本の客を信用してもいい》などと疑問の声が上がった。ただし、これもまた「マーケットに合わせた戦略」だと前田氏は分析する。
「ディズニーは各国別に戦略を微調整するのが通例です。『ベイマックス』(2014)では、中国やロシアがバトル・アクション物を彷彿とさせるビジュアルであるのに対し、日本はベイマックスと少年の絆を押し出す感動路線。これは日本の宣伝部が『“感動推し”にしたほうが、より幅広い集客を見込める』と踏んだ結果です。
『トイ・ストーリー5』の場合は前作から7年も経っていますし、ジェシーはこれまでサブキャラクターの1人に過ぎなかったのは事実。圧倒的知名度のあるウッディとバズを目立つように配置するのが無難だと判断したのでしょう」(前田氏)