■全東信は“水商売の駆け込み寺”

 個人経営の小規模な飲食店は、自転車操業でなんとか経営を成り立たせているケースも多い。売上金を最短5日で入金する“早期立替払い”は、全東信の最大の特徴であり武器だった。

 ただし、驚かされるのは、全東信の被害を訴えている中に全国的に有名なキャバクラ店や芸能人が経営する店も含まれていることだ。

「20万とか30万とか使ってシャンパンを入れるような高級店はスナックよりも動くお金は大きくなるよね。その分、仕入れだって大変だろうしさ。だから結局、店の大きさは関係ないわけ。小さいお店だから経営が苦しくて全東信に頼るという話じゃなくて、むしろ動くお金が大きい銀座のクラブとかのほうが全東信に頼っている面はあると思う」(前出のAさん)

 加えて全東信は“加入が簡単”ということでも重宝されていた。本来ならクレジット会社の審査に通りにくいホストクラブや風俗店も積極的に加盟させるのが全東信の方針だったからだ。そのため、全東信は“水商売の駆け込み寺”と呼ばれることもあったという。

「そもそもキャバクラとかホストクラブに社会的信用があるのかっていう話なのよ。“脱税の温床だ”って、昔から問題視されてきたわけじゃない。確定申告していない人も多いだろうしさ。そういうの、絶対に調べていると思うよ。とにかく水商売ってイメージがグレーだからね。私もこういう商売をやっている以上、同業者のことを悪く言いたくはないけど、残念ながらそういう店が多いのは事実」(前同)

 全東信がホワイトナイト的な存在だった面はあるかもしれないが、それを上回る放漫経営ぶりも明らかになっている。クレジットカード研究をライフワークとするジャーナリストの岩田昭男氏は「何から何までずさんすぎる」と断言する。

「まず、巨額の粉飾決済が20年以上にわたって恒常化していました。2024年には本来なら絶対に審査に通らないような悪質ぼったくり店なども他人名義で契約を結ばせようとして、社員が逮捕されています。この件は組織的犯行ということで、融資元の金融機関が慌てて資金提供を止めた。そして資金ショートへと至ったのです」

 そのうえで岩田氏は「全東信と同じような枠組みの会社は現れない」と今後の見通しについて言及する。

「夜のお店にとっては本当に大迷惑だと思います。でも、ある意味でこれはチャンスでもあるんですよ。かつてクレジットカードの審査や手数料の壁があったところに、PayPayは“手数料ゼロ”を謳いながら一気にシェアを拡大させました。高齢者が経営する街の理髪店などでも“クレジットはNGだけど、PayPayは使えます”という店は多いですからね。全東信が崩壊したことで、また新しい決済サービスや資金化の仕組みが登場することに期待したいです」(前同)

はたして、ネオン街にゲームチェンジャーは現れるのか?

岩田昭男(いわた・あきお)
1952年生まれ。消費生活評論家、ジャーナリスト。早稲田大学大学院修了後、月刊誌記者を経て独立。クレジットカード、電子マネー、キャッシュレス決済、流通分野などの専門家として、テレビや雑誌、Webメディアなどで幅広く活躍中。著書に『「信用偏差値」あなたを格付けする』(文春新書)、『電子マネー最終戦争』(洋泉社)など。