■『君の好きは無敵』序盤の失敗

 変顔などの松本若菜劇場は封印され、杏奈(松本)と瀬尾(佐野)のハイテンションでガチャガチャしたやりとりも、彼が放浪したことで激減。それに加えて、門戸(白石)の長台詞が推し活民に刺さる展開を見せ、サプライズで『西園寺さんは家事をしない』(同局系)で松本と共演した、子役の倉田瑛茉(6)がゲスト登場したりと、称賛も納得の回だった。

 急に見やすくなった印象は、物語が進んで整理されてきたこともあるが、脚本によるところが大きいようだ。前半の4話は、物語のカギになるところをアチコチ端折るうえに、ドタバタが過剰で見にくい印象があった。それらの脚本担当は宮本武史氏で、近作では暴力的でぶっ飛んだ芸能マネージャーが主役の『ダメマネ!』(日本テレビ系)。クセの強い作風が、思い切り出た感じだ。

 もちろん、見にくさの原因はそれだけではない。X上では、《草壁の主人公としての造形に魅力はあると思う一方、このテーマなら瀬尾を主人公にした方がまとまったのでは?と思うことがある。1人だった瀬尾に仲間ができて、仲間達の様々な経験を経て、「好き」の力で強くなっていく、瀬尾の成長物語みたいな》と、瀬尾を主人公にしたほうが良かったのでは、という声がある。

 つまり、お仕事ドラマの要素を強めにして、杏奈はシンプルに“しごでき”なコンサルタント。ワガママで超偏屈だけど、キャラクターデザインの才能はすごい主人公の瀬尾を、周囲を巻き込んで成長させていく、という流れにしたほうが、ドラマとしてはわかりやすかったかもしれない。

 それが松本を主演にすえたことで、「それならドタバタコメディみを入れないと」という流れができてしまった。結果、クセ強キャラが並び立ち、ストーリーとはあまり関係のないドタバタが繰り広げられるドラマになってしまった、という事情を予想するのだが、どうだろうか?

 残念なことに次回で第8話と、もう物語の終盤。序盤の入りにくさがなければ、数字はもっと盛り上がっていたかもしれないが、“時すでに遅し”だろう。せめて、松本若菜と佐野勇斗の黒歴史になるような、悲惨な数字にまで視聴率が落ち込まないことを願いたい。

(ドラマライター・ヤマカワ)

■ドラマライター・ヤマカワ
編プロ勤務を経てフリーライターに。これまでウェブや娯楽誌に記事を多数、執筆しながら、NHKの朝ドラ『ちゅらさん』にハマり、ウェブで感想を書き始める。好きな俳優は中村ゆり、多部未華子、佐藤二朗、綾野剛。今までで一番、好きなドラマは朝ドラの『あまちゃん』。ドラマに関してはエンタメからシリアスなものまで幅広く愛している。その愛ゆえの苦言もしばしば。