■松村北斗でなければ成り立たなかった
爽太(松村)の畑野(田中)との乱闘シーンのギクシャク具合や、ストーカーのはずなのに思わずうるっとしてしまう告白シーン。25年間、麻里子(岡崎)を見守り続けたプロストーカーの純粋な部分を、見事なまでに抽出してみせた松村の演技が圧巻。キモいのにキュンを成立させるのは、松村でなければできなかったはずだ。
さらに爽太と麻里子でキュンさせながら、爽太の日記を勝手に漁っていた友人の友也(塩野瑛久/31)について、麻里子と同じ連続誘拐事件の被害者の弟だったということが、ようやく明らかに。爽太の想いが通じたことで物語がゆるむかと思えば、シリアス部分がしっかりと補完され、最後まで緊張感を維持させている。
これを受けて、友也が麻里子の相談相手で秘書の泉(佐々木希/38)に近づいたのは、泉が畑野の誘拐事件で命を落とした姉・美月の友人だったのではという考察が出てきており、細かな作り込みも完璧。ミステリーの最終盤はどうしても先が見えて熱が冷めがちだが、うまく回避させていて、演技だけでなく脚本も素晴らしい。
始まった当初は、「最も無垢で、最も危険なラブサスペンス」といううたい文句に正直、ピンときていなかったが、ここまで見れば納得。夏ドラマでもトップクラスの出来といえる。配信サービス・TVerのお気に入り登録数も94.3万(9月9日午後1時現在)と最後まで伸び続けていて、ジワジワとだが今も支持を広げていることがわかる。
夏ドラマは日曜劇場『VIVANT』(TBS系/毎週午後9時~)ばかりが話題だが、一番見るべきドラマだったのは、実は本作だったようだ。次回、麻里子の父・銀次郎(石黒賢/60)が過去と現在の真相を告白し、サスペンス展開が大きく動くようだが、果たして爽太と麻里子のラブ展開はどうなる?(ドラマライター・ヤマカワ)
■ドラマライター・ヤマカワ
編プロ勤務を経てフリーライターに。これまでウェブや娯楽誌に記事を多数、執筆しながら、NHKの朝ドラ『ちゅらさん』にハマり、ウェブで感想を書き始める。好きな俳優は中村ゆり、多部未華子、佐藤二朗、綾野剛。今までで一番、好きなドラマは朝ドラの『あまちゃん』。ドラマに関してはエンタメからシリアスなものまで幅広く愛している。その愛ゆえの苦言もしばしば。