軍事フォトジャーナリスト・菊池雅之が、台湾有事をはじめ、迫り来る極東の脅威と日本、アメリカ、台湾の戦力を徹底比較。独自の現地取材写真とともに解説した“リアルな戦場のテクノロジー”を読み解くコラム。

■日頃の活動内容はすべて非公開 上空の電波を集め有事に備える

 日本周辺空域にたびたび姿を現す中国の電子情報収集機「Y-9JB」は、レーダーや航空機から発せられる電波を傍受することを任務としている。こうした任務をELINT(エリント)と呼ぶ。機体のベースとなっているのが、多用途中型輸送機「Y-9」。早期警戒管制機型、電子戦機型など派生型が多い。

Y-9JB(中国・価格不明)※写真/統合幕僚監部

 日本もELINT任務に当たる「YS-11EB」という機体を配備している。戦後初の国産旅客機「YS-11」をベースに人員輸送型の「YS-11P」、貨物輸送型の「YS-11C」など、主に輸送機として配備してきたが、「C-130輸送機」の配備決定後は、YS-11を電子戦訓練機「YS-11EA」や電子情報収集機「YS-11EB」へと改造。これは従来のエンジンから高出力のエンジンT64へと換装したため、「スーパーYS」とも呼ばれている。

YS-11EB(日本・約10億円※YS-11)※写真/菊池雅之

 YS-11EA電子戦訓練機の任務は、機体に搭載された電波妨害(ECM)装置を使い、レーダーや無線通信が妨害された状況を作り出すこと。この状況の中で、戦闘機はどのように行動すべきかを訓練する。YS-11EB電子情報収集機は、敵の電波や無線を収集するという秘匿性の高い任務を行う。

 中国のY-9JB、空自のYS-11EBは、ともに日頃の活動内容などが一切公開されることはない。上空を飛行し、そこに飛び交う電波をひたすら集めていく。そうすることで、有事の際にレーダーやミサイルを無力化することができる。

 YS-11EBは空自のホームページにすら出ておらず、長らく公然の秘密という扱いだったが、寄る年波に勝てず、引退が迫っている。

●SPEC比較 YS-11EB vs Y-9JB

情報収集機 YS-11EB(日本) Y-9JB(中国)
全長 26.3m 約36m
全高 8.98m 約11m
全幅 32.0m 約38m
最高速度 時速480km 時速660km
乗員 2名+測定員等(詳細不明) 4名+測定員等(詳細不明)

菊池雅之(きくち・まさゆき)
軍事フォトジャーナリスト。講談社フライデー契約カメラマンを経てフリーに。陸海空自衛隊に加え、世界中の軍隊を取材。著書『ビジュアルで分かる自衛隊用語辞典』(双葉社)、『自衛隊だけが日本を救える』(光人新社)他多数。