■いじめに発展するケースも

 ゲートボールは、5対5のチーム戦で行われる。1試合30分の間に、3つのゲートを順番に通過させて得点を競う。試合は、相手のボールをコート外に追いやったり、味方のボールを有利な位置に動かしたりと、複雑な駆け引きが展開される。ただ順番に打っているように見えて、実は高度な戦略が求められるスポーツなのだ。

 そのため、各チームのキャプテンが作戦を考え、選手に指示を出すのだが、その際、独特のルールがあるという。

「“10秒ルール”というものがあります。打順を告げられてから、原則10秒以内に打たなければならないんです。キャプテンも10秒では意図をしっかり伝えられないですし、打つ側も、初心者になればなるほどキャプテンの考えを理解できません」(同)

 試合に熱中するあまりつい言葉遣いが荒くなり、叱責の声が絶えなくなることも。

「ときにはいじめや事件に発展するケースもあります。2021年8月、北海道滝川市のゲートボール場で、傷害事件が起きています。プレーを妨害されたと腹を立てた74歳の男性が、一緒に競技していた71歳の女性の顔を殴るなどしてけがを負わせ、傷害容疑で逮捕されています」(全国紙社会部記者)

 実際、日本ゲートボール連合も、言葉による暴力が競技離れを招いていることを公式テキストで認めている。対策として、2024年には長野県ゲートボール連盟が約90人の指導者を対象にハラスメント防止研修を実施。公式テキストでも、暴言やいじめなどの根絶を呼びかけている。

 さまざまな要因から日本では競技人口が減少しているゲートボール。ところが、海外では対照的な動きを見せているという。

「以前は中国、韓国がすごく多かったんですが、今はインドネシアやタイあたりが結構盛んだそうです。特にインドネシアでは、若い人たちがやっているのを見ますね」(鈴木氏)

 もともと子供の遊びとして誕生したゲートボールが、海を越えて原点回帰──。実はこの動き、日本でも始まっているようだ。

「10月中旬に開催された全日本選手権には、9歳から83歳まで257人が出場。3連覇を果たした鹿児島県の霧島クラブでは、13歳の選手が主力として活躍しました」(前出の運動部記者)

 鈴木氏も、和歌山県内の小学校で体験授業を開くなど、若い世代への普及に力を入れているという。

「ゲートボールの良さは、若い人と高齢者が、世代を超えて一緒にプレーできることだと思っています」

 人生100年時代。ゲートボールは今、「世代」という名のゲートをくぐろうとしている。

鈴木義幸(すずき・よしゆき)
和歌山県ゲートボール協会普及指導委員。小学生の頃からゲートボールを始め、全国ジュニア大会で準優勝を経験。YouTubeチャンネル「すずしんgateball革命家」で競技の魅力や技術を発信するほか、体験会や講習会を通じて若い世代への普及活動に取り組んでいる。