■専門家である医師は感染力の高まりを指摘

 一方、巷では着実に感染の拡大を実感している人もいる。その一人が、東京都内にある「ひまわり医院」の院長を務める伊藤大介医師だ。

「5月末頃から来院する患者さんの陽性率が急上昇しています。今は70%ほどが陽性者です。6月頃は風邪症状の方も今の半分ほどで、陽性率が30〜40%だったことを考慮すると“第9波”の到来を実感します」(伊藤医師)

 感染拡大を実感している伊藤医師は、エリスについてどのように捉えているのか。

「都内ではコロナウイルス感染者の内、4割以上がエリスに罹患していると思われます。特徴として感じられるのは38℃〜39℃の高熱はやや出やすくなっています。一方で喉の痛みを訴える人は減っていますね。消化器系の症状や咳や鼻水など、多彩な症状を示しやすいです」

 今後、不安視されるのが後遺症だという。

「エリスに限らずですが、コロナウイルスの症状の一つに後遺症があげられます。咳、息切れ、倦怠感、立ちくらみなど様々な後遺症が残る可能性はあります」

 感染を防ぐためにはどのような対策が求められるのか。

「公共交通機関を使用しないといった対策は現実的ではありません。重症化のリスクがある高齢者の方を中心にマスクや手洗い、うがいなどの対策は必要だと思います。しかし、重症化のリスクが低い若者が日常生活を犠牲にまでする必要はないのでは」

 9月20日からは、高齢者を中心に追加のワクチン接種も決定している。伊藤医師はこの施策をどのように捉えているのか。

「新しいワクチンを使用した臨床試験のデータがあるわけではないので、効果があるとは言い切れません。しかし、新型ワクチンは新規株に対応したワクチンではあるので、理論的には効果的であると予想されます」

 コロナ禍から脱却し、日常生活を取り戻せたかに思われたのも束の間のこと。再び感染拡大の脅威に対峙しなければならないのかもしれない。